2021年4月公表のM&A件数は422件となり前年同月比で41.1%増加した。月間件数としては過去最多であった2021年3月の467件に次ぐ水準となった。マーケット別にみると、IN-INは319件、前年同月比34.0%増、IN-OUTは69件、同56.8%増、また、OUT-INは34件、同100%増であり、いずれのマーケットも増加した。このうち事業承継M&A(注1参照)は54件、前年同月比10.2%増であり、この中で人材派遣業界に関わるM&Aが4件あった。

 出版・印刷、求人広告や人材派遣などを事業とする廣済堂(東証1部上場)は、人材派遣業、有料職業紹介業のエヌティ(埼玉県鴻巣市)、Neo(同)の2社を買収する。代表取締役からそれぞれ全株式を取得する。エヌティは2011年設立、売上高8億3100万円。Neoは2016年設立、同2億6600万円。2社は主に物流倉庫業への人材派遣を行っている。埼玉県北部を営業エリアとし、大手物流会社などの優良得意先を有する。廣済堂はグループの業容拡大を図る。グループの情報ソリューション事業やBPO事業などとの連携による売上創出を見込む。

 

 建設業界・プラント業界向け人材派遣・紹介のコプロ・ホールディングス(東証1部上場)は、機械設計技術者派遣のアトモス(愛知県名古屋市)を買収する。個人1人から全株式を取得する。同社は2006年設立、売上高8億2700万円。大手製造業の開発・設計部門を中心に約100人を派遣してきた。独自の人材育成プログラムを構築し、多くの海外人材の採用実績を有する。コプロHDグループはエンジニア派遣領域での事業ポートフォリオの拡大を通して、グループ全体の事業成長と収益の安定性向上を図る。

 業界大手のパソナグループ(東証1部上場)は、法務分野に特化した人材サービス提供のMore-Selections(東京都)を買収した。社長から全株式を取得した。同社は2007年設立。司法試験・企業法務経験者のデータベースを持つ。司法試験の受験経験を持つ法務人材が多数登録しており、法務分野に特化した人材サービスを提供しているほか、企業法務部門向け情報サイトの運営などを行っている。パソナグループは法務人材の需要拡大に向けた体制強化を図る。


 少子・高齢化進展などを背景とする人手不足は、人材派遣業界にとって追い風となってきた。しかし、新型コロナウイルス発生を契機に人材派遣の需要は減少していると伝えられ、実際、有効求人倍率も低下している。中長期的には業務の一部を機械やロボットなどで賄うことを検討する企業は少なくないと言われており、今後、人材派遣会社にとって専門性の高い人材や派遣の機動性の確保及び拡充、また、顧客企業の拡大は一層肝要になると思われ、これらを目的にM&Aを検討する人材派遣会社は増加すると考えられる。 



(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。