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2022年1月の事業承継M&Aマーケット概況 ~DX推進がソフト・情報業界におけるM&Aの一因に〜

月刊事業承継M&Aレポート

2022.02.17

 2022年1月の件数は319件で、前年同月比18.6%の増加となった。マーケット別ではIN-INが250件、前年同月比14.2%増、IN-OUTは51件、同45.7%増、また、OUT-INは18件、同20.0%増であった。同月の事業承継M&A(注1参照)は44件であり、2021年12月と同様にソフト・情報に属する企業を買い手または売り手とするM&Aが多く15件を占めた。以下は主要な案件である。

 ITエンジニア派遣のBranding Engineer(東証マザーズ上場)は、システムエンジニアリングサービスのTSRソリューションズ(東京都)を買収する。代表取締役から3億4,600万円で全株式を取得する。同社は2008年設立、売上高6億1,100万円。Branding Engineerは双方のITエンジニアを双方の顧客に紹介するクロスセルの実現を見込む。TSRの強みであるベテランITエンジニア人材をプロパー社員として配置し、Branding Engineerの若手ITフリーランスエンジニアとのチーム組成を行う。DX化の推進などを中心とした幅広いニーズに対し、高付加価値の提案をする。

 各種システム・アプリ開発のSharing Innovations(東証マザーズ上場)は、ソフトウェア開発のインタームーブ(愛知県)を買収した。代表取締役から全株式を取得した。同社は2006年設立。Salesforceのインテグレーション事業に加え、Salesforceと連携する「AppMoveワークフロー」などの開発提供を行うアプリケーション事業を提供している。Sharing Innovationsはクラウドインテグレーション事業の成長を目指す。顧客企業のDXを支援する。


 市場調査サービス提供のネオマーケティング(JASDAQ上場)は、AIアルゴリズム設計・実装、ソリューション提供ベンチャーのZero(東京都)を買収した。代表者から6億3,500万円で全株式を取得した。同社は2019年11月設立、売上高1億5,300万円。ネオマーケティングはクライアント企業のマーケティング活動やDX化でのAI活用を推進する。データ分析での効率化や予測精度を高める。顧客の事業を成功させる生活者起点のマーケティング支援会社としてのポジションを確立させる体制を整える。

 マーケティングプラットフォーム事業のイルグルム(東証マザーズ上場)は、インターネットサービス(SaaS)提供などのファーエンドテクノロジー(島根県)を買収する。代表取締役から1億3,500万円で全株式を取得する。同代表取締役は続投する。同社は2008年設立、売上高1億1,700万円。オープンソースのプロジェクト管理ツール「Redmine」の有償クラウド版「My Redmine」を提供する事業を展開している。イルグルムは顧客企業へのマーケティングDX推進支援サービスを強化する。事業領域の拡大を目指す。

 各案件の概要に含まれているキーワードはDX(デジタルトランスフォーメーションの略)である。経済産業省のガイドラインで、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。各案件とも顧客のDX推進ニーズの拡大に対応するためのものである。
 

 DXは民間だけが推進しようとしているものではなく、政府や自治体も推進しようとしている。こうした中、今月(2022年1月)、SYSホールディングス(各種業務システム開発等、JASDAQ上場)による、自治体等公共関連を中心としたソフトウェア開発・運用事業を手掛けるマグナシステム(東京都、売上高約1億100万円)の買収も公表されている。90%の株式を保有するマグナシステムの代表取締役が、残りの10%の株式を保有する取締役から株式を取得したうえで、SYSホールディングスは同代表取締役から全株式を取得する。

 官民のDX推進に関わるサービス拡大や向上を目的に、ソフト・情報業界におけるM&Aは増加すると考えられる。ソフト・情報業界に中堅・中小企業が多いことに鑑みれば、事業承継M&Aが活発に行われていく一因になりそうである。


(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。

 

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