2019年2月公表のM&A件数は360件あり、前年同月比で22.4%の増加となった。マーケット別では、IN-INが265件で前年同月比21.0%増、IN-OUTは71件で前年同月比29.1%増、OUT-INは24件で前年同月比20.0%増と、全てのマーケットで増加した。このうち公表ベースの事業承継M&Aは47件(注1参照)あった。以下は、買い手の事業を補完・強化する機能を事業承継M&Aにより取り込んだ案件事例である。

 

ノーリツ鋼機は、全額出資子会社でマーキングペン先など製造・販売のテイボー(静岡県)を通じて、PBT(化学繊維)ブラシ製造販売のsoliton corporation(ソリトン、京都府)を買収した。既存株主から全株式を取得した。同社は2010年設立。リキッドアイライナーやアイブロー筆部分に使用されるPBTブラシに対応する中継芯の製造を行う。テイボーはペン先事業で培った技術を活かして、2012年から各種化粧品の中継芯などを製品とするコスメ事業の育成に取り組んでいる。PBTブラシ・中継芯・組付けの一体型開発を実現する。世界中の顧客の多様なニーズに応え、魅力ある製品をスピーディに提供する。

 

歩行補助具製造販売の幸和製作所は、デイサービス事業などのパムック(東京都)を3月1日付で買収する。役員2人等計4人から5900万円で全株式を取得する。同社は1995年設立、売上高約6億3200万円。東京・江戸川区を中心に自立支援を目的としたデイサービス事業、住環境に合わせた福祉用具レンタル事業、車いすのオーダーメイド事業を展開する。幸和製作所はパムックの介護福祉の現場から得られるニーズなどの情報をもとに、製品のいち早い開発と開発力の向上を図る。

 

航空宇宙関連部品試作・量産などの由紀精密(神奈川県)の持株会社である由紀ホールディングス(東京都)は、機械加工の仙北谷(せんぼくや、神奈川県)を買収した。全株式を取得した。由紀精密の会長が代表取締役に就いた。仙北谷は1953年創業、従業員数30人。航空宇宙関連部品の加工で高い技術力を誇る。切削加工分野の中で、由紀精密は旋盤加工を、仙北谷はマシニング加工を得意とする。2017年7月に代表者が急逝していた。両社は30年以上、取引や交流を持つ。由紀HDは航空宇宙・産業機器部品の製造などの分野でグループ内の技術的な相乗効果を見込む。

 

東京商工リサーチの「2018年休廃業・解散企業動向調査」によると、2018年の国内企業の休廃業・解散は46,724件あり、2013年の34,800件と比べ5年間で約34%増えた。休廃業・解散企業件数が増えている背景として、後継者不在や人手不足等の課題を抱える企業が増えていることが挙げられ、事業承継M&A件数もこれに連動して増加していると考えられる。しかしながら、事業承継M&Aはこのような企業に対して行われるだけでなく、実は買い手企業が対象企業の強みや魅力を発見し、自社事業を補完・強化する目的で行われることも多い。相手との組み合わせの妙によっては対象事業の価値を格段に高められるケースが多々あり、M&Aを事業継続のためだけでなく、企業価値向上の手段の一つとして検討することは有効であると考えられる。

 

 
(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。