2019年8月公表のM&A件数は317件であり前年同月比で11.7%の減少となった。マーケット別では、IN-INが231件で前年同月比10.8%減、IN-OUTは65件で前年同月比17.7%減、一方、OUT-INは21件で前年同月と同水準であった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは40件(注1参照)であり、この中で小売関連のM&Aが8件あった。

 大手自動車販売会社のVTホールディングス(愛知県)は、同業の光洋自動車(北海道)を買収した。代表取締役等3人から全株式を取得した。同社は1976年設立、売上高31億500万円。北海道北見市、旭川市、札幌市でフォルクスワーゲン3店舗、、アウディ2店舗を運営している。VTHDはグループの自動車ディーラー運営のノウハウを導入し、同エリアでのフォルクスワーゲン、アウディのシェア拡大に注力する。収益の拡大を図る。

 また、調剤薬局大手のクオールホールディングス(東京都)は、保険薬局運営のセラ・メディック(大阪府)を買収した。個人1人から全株式を取得した。同社は1991年設立、売上高30億4200万円。「プラザ薬局」、「まりん薬局」、「日の丸薬局」、「わかば薬局」の屋号で大阪府に9店舗、奈良県に1店舗運営している。クオールグループは地域に密着した「かかりつけ薬局」を志向しており、地域医療、在宅医療への貢献に資すると判断した。グループの店舗数は803店舗となる。

 この他、ホームセンターや食品スーパーの他に建設業などを営む綿半ホールディングス(長野県、同社の小売事業の売上構成比は63.3%)は、戸建木造住宅のサイエンスホーム(静岡県)を買収する。社長等4人から全株式を取得する。同社は2011年設立、売上高23億9100万円。戸建木造住宅「サイエンスホームの真壁づくりの家」を提供するフランチャイズ事業を行っている。全国に129の加盟店を有する。綿半ホールディングスは「Green Life」を主軸とした「自然との共生」をビジョンに小売事業、建設事業などを展開している。サイエンスホームの地場産木材を使用した事業展開とグループのビジョンが合致するため、グループの企業価値向上に資すると判断した。

 小売業界では、いわゆるGMSやコンビニエンス・ストア、また、家電量販店で再編が進展し、今後の再編の余地は小さいと言われる一方で、この他の業態では寡占化とは程遠い状況と伝えられている。前回及び前々回で触れたサービスや建設業界と同様に人手不足も深刻になっており、M&Aによって経営の効率化や事業領域及び営業エリアの拡大を図ろうとする動きは今後も継続すると考えられる。
 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。