2021年6月公表のM&A件数は320件となり前年同月比で11.5%増加した。マーケット別にみると、IN-INは244件、前年同月比6.6%増、IN-OUTは51件、同34.2%増、また、OUT-INは25件、同25.0%増であり、いずれのマーケットも増加した。このうち事業承継M&A(注1参照)は45件、前年同月比4.3%減であり、この中で売り手がベンチャー企業であったM&Aが4件あった。

 東証1部上場で、転職サイト運営などを事業とするキャリアインデックスは、WEB面接専用システム「BioGraph」提供ベンチャーのマージナル(広島市)を株式交換により買収する(発表は5月31日)。完全子会社化する。代表取締役から全株式を取得する。交換比率は1:147.076。自己株式を充てる。同社は2015年1月設立、売上高約7200万円。キャリアインデックスは集客サポート、取引先拡大サポートに加え、Web面接という新たな価値を提供する。人材領域で注力する応募課金型サービス「Adopt A dmin」との親和性が高く、SaaS型営業支援クラウドサービス「Leadle」との相乗効果を見込む。

 東証マザーズ上場で、遊休不動産などスペースの貸し借りのためのプラットフォーム「スペースマーケット」を提供するスペースマーケットは、スペース企画・運営などベンチャーのスペースモール(東京都)を買収する。個人から約1億8000万円で全株式を取得する。同社は2018年5月設立、売上高約1億3500万円。遊休資産の価値最大化を目的に、空き家・空きテナントなどの遊休不動産を対象としたレンタルスペースの設計企画・運営事業や運営代行事業などを提供している。これまで120件を超えるスペースの運営に携わり、ノウハウを蓄積してきた。スペースマーケットはスペースシェアプラットフォーム「スペースマーケット」を運営している。利用体験向上のための体制を強化する。

 東証マザーズ上場で、ネット広告、プログラミング教育などのユナイテッドは、デザイナーと企業をマッチングするデザイン特化型クラウドソーシングサービス「JOOi」運営ベンチャーのリベイス(東京都)を買収した。代表取締役から全株式を取得した。同社は2016年7月設立。ユナイテッドは全額出資子会社のキラメックス(同)が運営するオンラインプログラミングスクール「テックアカデミー」に登録されている独自の選考を通過したメンターと、「JOOi」に登録されているデザイナーを連携させ、サービス強化を図る。

 ベンチャー企業のオーナー経営者によるエグジットを目的とする事業承継M&Aは、2018以降、毎年20件台の水準となっており、2021年も上半期で14件となった。エグジットを決断した経営者は、自身の年齢的な問題よりも、自社が大手・有力企業などの傘下に入ることによる事業の拡大や、自社の売却を契機に新たな事業に身を投じることを目的としているケースが多く、事業承継M&A拡大の要因は経営者の年齢や後継者難だけではないことを示している。


(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。