2021年8月公表のM&A件数は320件となり前年同月比で11.5%増加した。マーケット別にみるとIN-INは257件、前年同月比10.3%増、IN-OUTは42件、同27.3%増、また、OUT-INは21件、同増減なしであった。このうち事業承継M&A(注1参照)は40件、前年同月比13.0%減であった。

 8月、公営競技企画、運営、開催受託、コンサルタントの日本トーター(東京都)は、清酒製造販売の上越酒造(新潟県)を買収した。株式を取得した。同社は従業員3人。大吟醸「越後美人」などを展開する。社長が高齢であった。日本トーターは既に新工場・新設備の建設計画に着手し、2022年度から本格的な酒造りに取り組む計画。施設の見学やネットによる直接販売、受託製造のほか、公営競技の記念品や贈答品としての製品活用などを検討する。上越酒造が創業されたのは1804年のことである。

 食品・飲料業界における中堅・中小企業を巡るM&Aをみると、老舗を対象としたM&Aが少なくない。以下は今年公表されたケースである。
 例えば、菓子製造販売のシャトレーゼホールディングス(山梨県)が買収した、「ナボナ」で知られる亀屋万年堂(東京都)の創業は1938年である。
 アイスクリーム製造の日進乳業(愛知県)が事業を譲り受けた、キャンディー製造のアメハマ製菓(愛知県)の創業は1910年である。
 また、パチンコ・スロット事業、不動産賃貸事業、再生可能エネルギー事業の公楽(岩手県)が買収した菊の司酒造(岩手県)の創業は1772年であり、岩手県最古の酒造会社である。


 老舗が培ってきた古き良きものを守りつつ、これを事業拡大に活用しようとする機運がより強くなれば、食品・飲料業界における老舗の中堅・中小企業を対象としたM&Aは増加していくであろう。


(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。