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2020年6月の事業承継M&Aマーケット概況 ~人材派遣会社を対象とするM&A〜

月刊事業承継M&Aレポート

2020.08.05

 2020年6月公表のM&A件数は287件で、前年同月比13.4%の減少となった。マーケット別ではIN-INが230件で前年同月比7.0%増、一方、IN-OUTは38件、同44.9%減、OUT-IN は19件で同29.6%減だった。IN-INはプラスとなったがIN-OUT、OUT-INは大幅なマイナスとなり、クロスボーダー案件のおいて新型コロナの影響が大きかった様子が窺える。同月の公表ベースの事業承継M&Aは47件(注1参照)であり、このうち人材派遣会社を対象とするケースが4件あった。

 ヘアサロン運営のエム・エイチ・グループは、人材派遣事業、人材紹介業のオンリー・ワン(東京都)を買収する。代表取締役から全株式を取得する。同社は2007年設立、売上高2億4100万円。販売・サービス系を中心に事業を展開している。主な取引先はファッション・コスメ業界の世界的なラグジュアリーブランドであり独自性を有している。エム・エイチ・グループ内のキャリアデザイン事業として新たな成長戦略の柱と位置付ける。グループ内のキャリアデザイン支援にオンリー・ワンのノウハウ・リソースを活用する。全額出資子会社で美容室支援事業のライトスタッフ(東京都)とのシナジー効果を創出する。


 映像、ゲーム、Web、広告・出版等の企画・制作を行なうクリエイターのプロデュース及びエージェンシーをコア事業とするクリーク・アンド・リバー社は、NHKと関連会社の制作・編集部門へのスタッフ派遣などのウイング(東京都)を買収する。会長から全株式を取得する。同社は2005年設立、売上高約7億600万円。気象キャスターの派遣などの事業も展開している。クリーク・アンド・リバー社の創業ビジネスである映像分野では、地上波テレビ番組の約45%に自社クリエイターが携わるなど事業基盤を築いてきた。ウイングのネットワークとC&Rの幅広いネットワークとの融合、シナジー効果により、事業規模・収益の拡大を目指す。


 エム・エイチ・グループは上記案件発表のリリースにおいて、「新型コロナウイルスの影響を受け、今後更に人材の流動化が進むことが想定され、一方、販売やサービスの提供形態は既存の枠にとらわれることなく、より多様化することが見込まれます。人材派遣事業者、人材紹介事業者においては、多様化するニーズに適した優秀な人材を供給することが求められ、独自性を有するオンリー・ワン社の活躍の場は拡大すると想定しております。」と述べている。コロナ対応に向けて人材派遣会社においても事業強化の肝要なことが示唆されており、同業界においてM&Aは今後一層重要な手段になりそうである。

 

 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。

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