2021年5月公表のM&A件数は326件となり前年同月比で33.1%増加した。5月としては過去最多の2019年5月333件に次ぐ水準となった。マーケット別にみると、IN-INは246件、前年同月比27.5%増、IN-OUTは62件、同77.1%増、また、OUT-INは18件、同5.9%増であり、いずれのマーケットも増加した。このうち事業承継M&A(注1参照)は46件、前年同月比7.0%増であり、この中で買い手が投資会社であったM&Aが6件あった。

 ベーシック・キャピタル・マネジメント(東京都)が運営するみのり3号投資事業有限責任組合(同)は、歯科技工所の三和デンタル(同)を買収した。社長から全株式を取得した。同社は1982年設立。高品質な歯科技工物を全国の歯科医院に供給してきた実績を有する。2004年にノンクラスプデンチャー「スマイルデンチャー」の販売を開始し、2020年には22万症例を突破した。BCMは経営陣とともに事業の拡大を推進する。

 丸紅の全額出資子会社のアイ・シグマ・キャピタル(東京都)が運営するアイ・シグマ事業支援ファンド3号投資事業有限責任組合(同)は、特別目的会社を通じて、合成樹脂被覆電線・複合多芯ケーブル製造・販売のニューテックス(埼玉県富士見市)を買収した。創業家から過半数の株式を取得した。同社は1965年設立。主にFA向けのケーブル製造を手掛ける。顧客のニーズにあわせた特注品・専用品のケーブル製造に強みがある。アイ・シグマ・キャピタルは経営改善ノウハウや丸紅グループのネットワークを活用した販路拡大、仕入・物流面での効率化などのノウハウを提供する。

 
 2017年に年間19件であった投資会社買い手の事業承継M&Aは2018年に49件となり、同年以降年40件台を維持。2021年も1~5月で21件となり年換算すると50件というレベルである。経営支援などを受けつつ事業の自主性・主体性を維持するには、大手同業の傘下に入るよりも投資会社の傘下の方がベターと考えたオーナー経営者の例も伝えられており、売り手側にとっては買い手の候補先を検討する際の重要な選択肢の一つとなりつつある。


(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。