2025年9月の事業承継M&Aマーケット概況 ～食品関連業種（食品、農林水産、外食）を対象とするM&A〜

　9月のM&A件数は400件で、前年同月比11.4%の増加となった。マーケット別ではIN-INが311件で前年同月比9.5%増、IN-OUTは58件、同38.1%増、一方、OUT-IN は31件で同6.1%減少した。同月の事業承継M&A（注1参照）は79件､前年同月（59件）比33.9%の増加となった。このうち、食品関連の業種（食品、農林水産、外食）に属する企業を売り手（対象）とするM&Aが10件あった。

　昭和産業（東証プライム上場）は、中華まんじゅう、中華惣菜など製造販売の東葛食品（千葉県鎌ケ谷市）を買収した。代表取締役等2人から株式を取得し、出資比率40.04%から完全子会社化した。同社は1966年創立。昭和産業は1985年に東葛食品に出資し、製品の供給や技術協力などで関係性を構築してきた。互いの連携を強化し、経営資源や相互の強みを結集させる。グループの冷凍食品、加工食品事業の体制を強固なものとし、事業の成長を実現する。

　外食子会社を傘下に擁するSRSホールディングス（東証プライム上場）は、飲食店経営のすし弁慶（鳥取県米子市)を買収する。社長から11億7,600万円で全株式を取得する。同社は1979年設立、売上高約18億7,300万円。グルメ回転寿司業態「すし弁慶」、「回転すし北海道」を鳥取県、島根県に6店舗展開している。境港などから仕入れた鮮魚を使用した寿司を創業時からの拘りである「新鮮」「デカネタ」で提供している。SRSHDはグルメ回転寿司業態の店舗網を拡大する。展開する「にぎり長次郎」や「うまい鮨勘」とのシナジーを見込む。

　野菜苗生産販売などを展開するベルグアース（東証スタンダード上場）は、野菜苗育成・販売のピーエスピー（山口県下関市）を買収する。代表取締役等から全株式を取得する。同社は1974年創業。1988年にオリジナル規格「PeSP苗」の発売以来、多くのオリジナル規格苗の育成・販売を行ってきた。1999年には種子のコーティング加工事業を開始した。大量加工だけでなく少量加工を可能とし、花種子などの加工が難しい種子コーティングも得意とする。ベルグアースはグループの野菜苗・苗関連事業の発展と強化に繋げる。経営資源の活用や共同購買による調達コストの適正を図る。

　レコフデータによると、食品関連の業種（食品、農林水産、外食）に属する企業を売り手（対象）とする事業承継M&Aの件数は例年30～50件だったが、今年は9月末までで60件を上回った。人口減少や原材料価格の高止まりなどが継続する中、M&Aによるシナジーや経営効率の追求に向けた動きは今後も活発な状況が継続すると考えられる。

（注1）M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
       IN-IN：日本企業同士のM&A
       IN-OUT：日本企業が当事者1（買い手）、外国企業が当事者2（売り手）となるM&A
       OUT-IN：外国企業が当事者1（買い手）、日本企業が当事者2（売り手）となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件（オーナー系企業売却案件）」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。