2019年3月公表のM&A件数は366件あり、前年同月比で12.6%の増加となった。マーケット別では、IN-INが282件で前年同月比19.5%増となったが、IN-OUTは60件で前年同月比4.8%減、また、OUT-INも24件と、前年同月比7.7%の減少となった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは53件(注1参照)あり、以下のような買い手の事業領域を拡大する事業承継M&A案件もあった。

 

エレベーター・エスカレーター保守専門会社のジャパンエレベーターサービスホールディングスは、ビルメンテナンス業の上新ビルサービス(新潟県)を買収する。個人4人から全株式を取得する。同社は1994年設立、売上高6億6300万円。上越市を地盤とし、地場業者トップクラスの実績と知名度を有する。ジャパンエレベーターサービスHDは未展開だった信越地域へのサービス提供、上新ビルサービスのビルメンテナンスに関する知見・ノウハウ・顧客基盤などを獲得する。経営資源の共有、事業連携によるシナジーの活用を通じて、事業基盤の拡大・強化を図る。

 

創薬支援事業等を行うトランスジェニックは、全額出資子会社で事業承継・再生分野に係る助言・支援サービス提供のTGビジネスサービス(福岡県)を通じて、エコガラス(複層ガラス)用副資材など輸入販売のTGM(東京都)を買収する。TGMの社長から全株式を取得する。同社は国内大手ガラスメーカーを主要販売先とする。トランスジェニックはバイオ業界の事業環境に影響されない収益の多様化の実現を目的に、2017年にTGビジネスサービスを設立した。複層ガラス用副資材は省エネ対策市場の需要を取り込むことができ、また、グループ内の貿易商社機能の拡充が期待できると判断した。

 

先月(2019年2月公表分)の事業承継M&Aレポートでは、買い手企業が自社事業を補完・強化する目的で行う事業承継M&Aについて触れたが、買い手が事業領域を拡げるために行うM&Aも少なくない。新規参入ともいえそうなM&Aに伴うリスクは小さなものではないかもしれないが、自社で一から事業を育成することに比べれば、短期間でその事業やこれに関わる人材、ノウハウを獲得することが可能だ。勿論、対象企業に他社では得難い魅力や強みがあることや、買い手にとって自社の事業との間でシナジーが見込めることも肝要と考えられる。対象企業の日常的な企業努力もM&Aの成立に向けたポイントの一つといえよう。
 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。