2019年7月公表のM&A件数は342件であり前年同月比で10.3%の増加となった。マーケット別では、IN-INが252件で前年同月比11.0%増、IN-OUTは72件で前年同月比4.3%増、また、OUT-INは18件と前年同月比28.6%増となった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは47件(注1参照)であり、この中の9件はサービス業(人材派遣、介護、警備事業など)を対象とするM&Aであった。

 ティーケーピー(TKP)は、人材紹介業、人材派遣業の品川配ぜん人紹介所(東京都)を買収した。代表取締役から全株式を取得した。一部報道では金額は5億円前後。同社は1970年設立、売上高約8億4600万円、派遣登録者数約3800人。著名ホテルを中心に配ぜん人材の派遣や紹介を行っている。充実した研修を行い、プロフェッショナルなサービス人材の提供を得意とする。TKPは「ガーデンシティ」ブランドを中心にホテル宴会場を運営している。ホテル宴会場運営支援事業へ参入する。費用削減や経験豊富なサービススタッフの増加、サービス人材研修制度の一体化でグループ全体のサービスレベルの向上を図る。

 モブキャストホールディングスは、ライツマネジメント事業のゲームゲート(東京都)を買収する。社長等から全株式を取得する。同社は2011年設立、売上高約6億400万円。アニメや漫画・ゲームを中心としたエンタメIPコンテンツのライツマネジメント事業を手がける。ゲーム化やアプリ化によるライツマネジメントを推進している。モブキャストHDはエンターテインメントに関わるサービス、これらの事業会社に対する経営支援、事業支援サービスを提供している。両社にとって付加価値のある相乗効果が見込めると判断した。

 ケアサービスは、居宅介護支援・訪問介護事業のひだまり(東京都)を買収する。個人1人から全株式を取得する。同社は2015年8月設立、売上高約1億3900万円。東京・江東区で事業を展開する。ケアサービスは在宅介護事業では東京23区を中心としたドミナント戦略を展開している。近隣のデイサービスとの相互活性化を図る。江東区とその隣接地域での深耕拡大の足掛かりとして在宅介護事業の強化につなげる。

 サービス業を対象とするM&Aは月平均で2017年5.5件、2018年8.1件、2019年(1~7月)9.8件と大きく増加している。図表1は2019年6月調査の日銀短観における業種別雇用人員判断DI(雇用人員につき「過剰」の回答割合から「不足」の回答割合を差し引いたもの)であるが、前月のレポ-トで触れた建設と同様にサービス業における人手不足感はかなり強く、人手不足はサービス業を対象とする事業承継M&A増加の一因になっているものと考えられる。

 

(図表1)日銀短観(2019年6月調査)雇用人員判断DI
             (雇用人員につき「過剰」の回答割合から「不足」の回答割合を差し引いたもの)



 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。