2019年6月公表のM&A件数は311件であり、前年同月比で6.9%の増加となった。マーケット別では、IN-INが215件で前年同月比0.9%減、一方、IN-OUTは69件で前年同月比25.5%増、また、OUT-INは27件と前年同月比42.1%増となった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは38件(注1参照)であり、この中の8件は建設業を対象とするM&Aであった。特に特定分野の工事を主力事業とする企業を対象とするケースが多かった。

 旭有機材は、断熱、内装工事のランドウィック(大阪府)を買収する。全株式を取得する。同社は1995年設立、従業員29人。関西地区を中心に大型商業施設を主とした事業を展開している。大手ゼネコンを主要顧客に持つ。旭有機材は樹脂事業の中核の1つである発泡断熱事業の発泡断熱製品の拡販につなげる。ランドウィックの施工・評価技術を利用することで製品の技術優位性の構築と評価獲得を図る。

 ハウスコムは、建築物施工、営繕などのエスケイビル建材(埼玉県)を買収する。社長から全株式を取得する。同社は2007年設立、売上高約6億6800万円。塗装工事、金属建具工事、リニューアル工事やマンションリフォームなど幅広い分野の工事業務を行う。営繕工事での技術と施工管理のノウハウを有する。主に関東地域で事業を展開している。ハウスコムは新規事業の一つとしてリフォーム事業を2016年3月期に開始した。同事業での連携を進め、顧客からの引合い・受注・施工手配・工事管理などの一連の業務で相互の強みを活かすことで、シナジー効果を見込む。

 ヒビノは、全額出資子会社で建築音響工事設計・監理などの日本音響エンジニアリング(東京都)を通じて、防音設備工事設計・施工などのサンオー(同)を買収する。社長等2人から7000万円で全株式を取得する。同社は1989年設立、売上高2億4600万円。工場やオフィスビル、公共施設、商業施設の騒音対策工事を主力事業とするほか、防音パネルなどの防音設備製品を設計・製造する。空調設備に対する防音・消音技術に強みを持つ。日本音響エンジニアリングはサンオーの製品や製造機能などを活用することで、事業拡大を見込む。新たな騒音対策製品の共同開発につなげる。

 建設業を対象とする事業承継M&Aは2013年には14件であったが、2018年には32件と年ベースでは過去最多となり、2019年も上半期で既に23件となっている。

 2019年6月調査の日銀短観をみると、建設の雇用人員判断DI(雇用人員につき「過剰」の回答割合から「不足」の回答割合を差し引いたもの)は-49であり人手不足感は強い。また、総務省「労働力調査」などによると建設業就業者の高齢化が進展しており、将来的な技能者不足が懸念されている。
  M&Aにより工事や設計に関わる人材やノウハウ等を確保・拡大しようとする動きは今後も継続すると考えられる。

 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。