2019年10月公表のM&A件数は356件であり前年同月比7.5%の減少となった。マーケット別では、IN-INが256件で前年同月比9.5%減、IN-OUTは76件で前年同月比7.0%増、そしてOUT-INは24件で前年同月比22.6%減であった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは59件(注1参照)であり、この中で「その他小売(スーパー・コンビニ、百貨店、家電量販店・ホームセンター以外の小売の総称)」に属する企業に関連するM&Aが12件あった。

 中古車小売販売のグッドスピードは、車検、整備、修理、鈑金塗装、中古車販売のホクトーモータース(愛知県)を買収した。個人から全株式を取得した。同社は1988年設立。自社で車検が対応可能な陸運局指定工場として国内外の乗用車やトラック、自動二輪など幅広く自動車整備を行っている。名古屋市内の住宅街という好立地であり、修理対応率9割を超える整備技術力を有する。グッドスピードは東海エリアでの中古車小売販売顧客のアフターフォロー体制の充実を図る。整備拠点の増設により他社で購入した顧客にも整備や車検などのカーライフサポートに関するサービス提供を拡大する。

 ビジョナリーホールディングスは、眼鏡・コンタクトレンズ・補聴器販売の大塚メガネ(滋賀県)を買収する。社長等5人から全株式を取得する。同社は1935年創業、売上高約2億4600万円。5店舗を有する。ビジョナリーHDは「目の健康プラットフォームを通じた同業のロールアップを戦略的に展開」することを掲げている。これまでメガネハウス(富山県、22店舗)の買収などの実績を有する。グループの目の健康を重視したサービス・プロダクトや購買行動分析に基づいたCRM、事業規模拡大によるスケールメリットを適宜活用しながら収益力の増強を図る。

 ウエルシアホールディングスは、ドラッグストア運営のよどや(高知県)を2020年3月2日付で買収する。個人より50.1%の株式を取得する。同社は1815年創業、売上高約100億円。24店舗を展開する。「食と運動」により病気にならない体づくりをサポートし、「美と健康」を守ることを重要課題と考え、高知県内で生活の根本的なサポートができる総合健康企業を目指している。ウエルシアHDはよどやの高知県での食品を中心とした営業ノウハウを取り入れつつ、共同仕入によるスケールメリットを活かし、自社の調剤事業の導入により相互補完することでシナジー効果の最大化を目指す。四国地方の出店の足掛かりとする。

 これまで事業承継M&Aの月間件数が60件以上を記録したことはないが、59件となったのは2018年8月、2019年4月に次いで3回目である。ある事業会社の経営者は「M&Aに対する認知度は一層高まっている」とコメントしている。今後も事業承継M&Aの月間件数は高い水準が続くと考えられる。
 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。