2019年11月公表のM&A件数は311件であり前年同月比9.3%の減少となった。マーケット別では、IN-INが220件で前年同月比14.4%減、一方、IN-OUTは67件で前年同月比1.5%増、そしてOUT-INは24件で前年同月比20.0%増であった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは54件(注1参照)であり、この中で外食企業に関連するM&Aが6件あった。

 大阪地盤に複数の業態の飲食店を展開するフジオフードシステムは、石臼挽き手打蕎麦専門店「土山人」運営の暮布土屋(兵庫県)を買収した。オーナーから90%の株式を取得した。同社は関西を中心に直営で7店舗・のれん分けで2店舗を展開する。2016年-2018年のミシュランガイドの「ビブグルマン」「ミシュランプレート」として5店舗が掲載されている。フジオフードシステムは今までなかった蕎麦業態を展開する。立地に合わせた幅広い出店や主力業態への波及を見込む。将来の事業の一つの柱に発展させる。

 居酒屋などを運営するチムニーは、飲食店経営のシーズライフ(東京都)を買収する。代表取締役から全株式を取得する。同社は2011年設立、売上高8億7300万円。東京関東圏を中心に焼肉店「牛星」「山河」10店舗、居酒屋「熟成魚うらら」1店舗を運営している。焼肉店では強い業態力を活かした店舗展開でファミリー層を中心に支持されており、居酒屋では地産の海の幸・山の幸・地酒などの福井の食文化を提供している。チムニーは「はなの舞」「さかなや道場」など海鮮を得意とする居酒屋を中心に全国で732店舗展開している。焼肉業態を運営するシーズライフをグループに迎えいれ、多店舗展開する。

 レコフM&Aデータベース((株)レコフデータ提供)によると、事業承継M&A(公表ベース)において外食企業を対象とした件数は2019年(12月11日現在)21件であり、2015年(7件)の3倍に達した。外食業界では、人口減少に伴う人手不足や中食に対する需要の拡大、消費者の強い節約志向、また、原材料調達のコスト変動などを背景に企業間競争が激化していると伝えられている。消費者のニーズに応えるため、店舗の多様化や規模拡大による経営効率向上に向けたM&Aが、今後も活発に行われる可能性は高いものと思われる。

 
(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。