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M&Aスキームの種類とその概要
メリット・デメリットも解説

M&A初級編

2024.04.23更新日:2024.04.23

M&Aとは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の頭文字をとったものです。M&Aが行われる目的は、買収側は「企業成長や事業拡大」、譲渡側は「事業継承や資本回収」が主体となります。

目次

М&Aの種類

M&Aは、大まかに分けて「合併」、「買収」、「会社分割」の3種類あります。そのうち、買収はさらに「株式譲渡」、「株式交換」、「株式移転」、「事業譲渡」の4種類に分かれます。ここでは、M&Aスキーム(手法)の種類と各種類における概要、メリット・デメリットを解説します。

M&Aのスキーム(1)合併

合併には、「吸収合併」もしくは「新設合併」があり、いずれも複数の企業を一つの法人格に統合する手法です。このとき、合併すると法人格が消滅(廃業)する企業のことを「消滅会社」、合併後も法人格が残る企業のことを「存続会社」と呼びます。吸収合併は、存続会社が消滅会社の資産や負債、商取引や雇用の契約などのすべてを継承して1つの企業となる手法です。新設合併は、合併後に存続させる会社を新しく設立し、そこへ消滅会社の権利すべてを継承する手法です。ただし、「新設合併」は実務的なデメリットが多いため、「合併」という場合は「吸収合併」であることがほとんどになります。

合併のメリット・デメリット

●メリット

吸収合併は、存続会社が、消滅会社における契約関係、権利義務、従業員などを包括的に引き継ぐため、例えば、「従業員を一度退職させ再度雇用契約する」などの継承における作業や手続きが不要です。また合併対価が株式なら、存続会社は資金調達をしなくても消滅会社の買収が可能になる点もメリットと言えるでしょう。異なる企業が1つになるため、相互のナレッジ共有などが行いやすくなり、相乗効果で売上の向上やコスト削減が見込めます。

●デメリット

デメリットは、反対する株主の買い取り請求への対応が必要になったり、株価が下がる可能性が発生したりする点です。また、社風や文化が異なる企業同士の統合作業が必要なので、現場に大きな負担がかかり、本来の事業運営に悪影響が出ることも考えられます。

M&Aのスキーム(2)買収

株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡とは、譲渡を希望する企業(売り手)の株主が、譲受希望企業もしくは個人(買い手)に、自社の保有株式を譲渡する手続きのことです。この時、売り手が3分の1以上の株式を保有し続けると経営に対する影響力を残すことができますが、3分の2以上の株式を譲渡すると会社の経営権が買い手に移転します。

ただし中小企業の株式譲渡で経営権まで移転させる場合は、株式を全部売却して会社を丸ごと譲渡するのが一般的です。株主が所有する株を売却する形なので、売却による対価は株主が受け取ります。手続きが簡潔なことから、M&Aのスキームとして最も身近な手法になっています。

●メリット

株式譲渡は、子会社の株式譲渡以外なら、株主を変更するだけで完結するので、ほかのM&A手法が要する手続きと比べると簡便な点が双方にとってのメリットです。そのため、最短で1カ月程度でM&Aが完了することもあります。また売り手側にとっては、株式の譲渡の対価として現金が受け取れる点や、事業継承者の問題が解決できる点、一定の成熟した企業を傘下に加えることにより、事業拡大しやすい点もメリットとしてあげられます。

●デメリット

デメリットは、売り手側にとっては、売却益に対して税金がかかる点や、売り手以外にも株主が複数いて株式が分散していると、集約の負担が発生する点です。株式の集約に行き詰まると、株式譲渡ができないことも想定されます。買い手側にとっては、負債も引き継がなければならない点と、株式の買収の対価としてまとまった現金を用意する必要性がある点があげられます。

株式交換のメリット・デメリット

株式交換とは、買い手企業が売り手企業の発行済株式のすべてを取得することで事業を継承する手法です。対価として、買い手企業の株を売り手企業の株主に交付します。この時、買い手企業と売り手企業の関係は「100%親会社・子会社」の関係になります。 例えば、A社がB社を子会社化したい場合、まずB社の株式を取得して子会社化。その後、B社側にA社株を引き渡して、A社とB社は親会社・子会社と言った関係になります。連携を強化することで経営効率を向上させることを目的としており、主にグループの再編の際に活用されています。

●メリット

双方のやり取りが株式で完結するため、金銭のやり取りが不要です。そのため、資金力の無い中小企業でもM&Aが行えるのがメリットです。買い手企業が上場企業の場合、売り手企業に交付された株が上昇する可能性もあります。

●デメリット

ただし、買い手企業側の株価は下落するリスクをはらんでいます。また、親会社(買い手企業)の株主が子会社(売り手企業)に加わるため、子会社の株主の議決権比率が下がって発言力が弱まったり、株式交換比率が下がって株主優待を受けられなくなる可能性があるので、子会社の株主から不満が出ることもあります。いずれの場合も、不利益を被る側の株主が株式交換に反発し、手続きが煩雑で労力を要する「買い取り請求」を行使される可能性があることもデメリットと言えるでしょう。

株式移転のメリット・デメリット

株式移転とは、1社ないし2社以上の企業が、自社の持つ発行済株式のすべてを、設立した新会社に移転させて事業継承を行う手法です。1社で行う時は「単独株式移転」、2社以上で行う時は「共同株式移転」と言います。株式の移転先の新会社が「完全親会社」、移転元の既存企業が「子会社」となるので、経営統合やホールディングカンパニー体制をとる際に多く用いられる手法です。株式移転は株式交換と混同されがちですが、株式交換は「既存企業同士で株を交換する手法」、株式移転は「新設された会社に既存企業の株を移転する手法」ですので、明確に異なります。

●メリット

まず、株式交換と同様に買収資金を必要としない点がメリットです。また、株式移転先の完全親会社が、移転元の子会社の経営をコントロールする形なので、子会社の独立性を保ったまま経営統合をすることが可能です。合併する時のように、異なる社風やシステムの統一などを行う必要性がありません。

●デメリット

デメリットは、新しく設立する会社に株式を移転させるという特性上、親会社になる企業も子会社となる企業も、双方が株式会社であることに限定される点です。また、株式の移転元の会社が上場している場合は、新会社設立に対する不安から株価が下落するリスクがあります。株主へは事前にしっかりとした説明を行っておきましょう。

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡は、売り手企業が買い手企業に、「株式」ではなく「営んでいる事業」を譲渡(売却)して事業を継承する手法です。会社をまるごと売買する株式譲渡とは異なり、譲渡を希望する事業のみの売買となりますので、会社の経営権は手元に残るのが特徴です。事業譲渡には、事業すべてを譲渡する「全部譲渡」、一部の事業のみを譲渡する「一部譲渡」があります。

●メリット

売り手企業は、譲渡により得た資金でより採算性の高い事業に注力し、企業の発展に活かせます。また、存続させたい事業の後継者がいない場合、事業譲渡をすることで、新たなオーナーに事業の存続を託せます。買い手企業にとっては、自社に利益をもたらす事業だけを買収できる点がメリットです。

●デメリット

デメリットは、一部の例外を除き、売り手企業は事業譲渡の際に、株主総会を開いて株主から承認を得る必要があります。また、売り手企業は買い手企業にどこまで事業を譲渡したいかの希望を出すことは可能ですが、買い手側も負債や不要な資産は引き取りたくないため、交渉が難航することがほとんどです。さらに、売り手側には競業避止義務があるため、売却から20年間は同一区内での同事業は行えません。 買い手企業側のデメリットは、売り手企業の従業員や取引先と新たに雇用契約を結び直す手間が発生することです。また現金でのやり取りになるので、事業の購入資金、および買収後の運営資金の準備が必須ですし、事業規模によっては巨額が必要になることも想定しておきましょう。

M&Aのスキーム(3)会社分割

会社分割では、社内事業などを複数の法人格に分割して、組織や資産を移転します。主にグループ会社の再編で用いられることが多い手法です。新しく会社を作って移転する方法を「新設分割」、既存の会社(買い手企業)へ引き継ぐ「吸収分割」の2種類があります。

会社分割のメリット・デメリット

●メリット

会社分割は株式を使って移転が行われるため、現金を用意する必要が無い点がメリットです。グループ再編で用いられる手法ということもあり、従業員の契約をし直す必要もほぼありません。

●デメリット

デメリットには、グループ再編を反対する株主に対して説得をしなければならない点や、経営統合がうまくいかないといった点があげられます。また、引き継ぐ組織の負債も負う必要があります。

М&Aの手法を選ぶポイント

企業の全部を譲渡するか一部を譲渡するか

M&Aの手法として、企業の全部を譲渡するのか一部を譲渡するのかの選択肢があります。全部を譲渡する場合は株式譲渡や株式交換、合併などがありますし、一部の譲渡なら事業譲渡や会社分割などの手法が取れるでしょう。会社の経営が難しい、継承者がいないなどの問題が企業全体にかかっているのか、一部事業のみなのかでどの手法をとるか検討しましょう。

現金が必要か不要か

株式譲渡や事業譲渡のM&A手法を用いる場合は、買い手企業は現金を用意する必要があります。現金調達が難しい場合は、株式をやり取りして行える手法を選ぶと良いでしょう。

組織が存続するか消滅するか

組織を存続させたいのか、消滅させていいのかでも選ぶべき手法は変わってきます。存続を希望するなら「事業譲渡」、消滅ならそれ以外の選択肢で最も自社の状況に適したものを選びましょう。存続希望の場合、株式を1/3保有することで経営に影響を残す「株式譲渡」を選ぶことも可能ですが、経営権が変わる場合は、譲渡後に組織再編などが行われ、既存とは違った形になる場合も多いです。

М&Aにおける契約の種類

基本合意契約

M&Aを行う会社名や手法、価格といった基本的事項に関する合意の確認書が「基本合意契約」です。トップ面談という、経営トップ同士の話し合いで条件が決定されるほか、必要に応じて記載する内容は増減します。この段階ではまだ法的拘束力はありません。

最終契約

売買の条件や各種条件、条項について、双方の合意の下最終的に締結されるのが「最終契約」です。これにより法的な拘束力が発生します。

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