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業界別M&A
美容室は、ヘアカットやカラー、パーマなどを通じて顧客の外見を整えるサービス業であり、日常生活に密着した存在です。国内では小規模・個人経営のサロンが多く、地域ごとに多様な店舗が展開されている点が特徴です。
一方で、美容室業界は新規参入が多く競争が激しい市場でもあり、集客や人材確保、収益性の確保といった課題を抱えています。こうした状況の中、事業承継や成長戦略の手段としてM&Aを活用する動きが広がっています。
そこで今回は、美容室業界の市場動向や課題を踏まえたうえで、M&Aの主な動向や立場別のメリット、成功させるためのポイントまで分かりやすく解説します。
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事業承継・譲渡売却は
美容室とは、 髪のカットやカラー、パーマなどの施術を通じて、外見を整えるサービスを提供する施設 です。
単なるヘアカットにとどまらず、トリートメントやヘッドスパなどの頭皮ケア、スタイリング提案まで含め、利用者の要望や髪質に応じた施術を行う点が特徴です。近年では、リラクゼーションや癒しの要素を重視した空間づくりやサービス提供も広がっています。
正式名称は「美容所」ですが、実務上はほとんどのお店が「美容室」や「美容院」「ヘアサロン」という名称を使用しています。
これらは基本的に同じ意味で使われていますが、「美容院」は髪に特化したサービス、「美容室」は頭皮ケアやスキンケアを含めたトータルな美容サービスというニュアンスで使い分けられることもあります。また、呼び方には地域差も見られます。
なお、理容院(床屋)は主に男性向けのサービスを中心とし、顔そり(シェービング)などが行える点が大きな違いです。一方、美容室は男女問わず利用でき、パーマやカラーなどデザイン性の高い施術に強みがあります。
美容室を含む理美容サロン市場は、近年も緩やかな成長を続けています。
株式会社矢野経済研究所の調査によると、理美容サロン市場における事業者売上高ベースの市場規模(2020年~2025年)は下記の通りでした。
| 年度 | 市場規模(事業者売上高ベース) |
|---|---|
| 2025年(予測) | 約1兆5,307億円 |
| 2024年 | 約1兆5,293億円 |
| 2023年 | 約1兆4,976億円 |
| 2022年 | 約1兆4,804億円 |
| 2021年 | 約1兆4,382億円 |
| 2020年 | 約1兆3,810億円 |
(出典:株式会社 矢野経済研究所「理美容サロン市場に関する調査を実施(2025年)」/
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3843)
2020年の約1兆3,810億円から、2025年には約1兆5,307億円(予測)にまで拡大しており、 安定した需要に支えられながら右肩上がりで推移していることが分かります。
美容室業界の特徴として、小規模・個人経営のサロンが多数を占めている点が挙げられます。厚生労働省のデータによると、経営主体の約88.7%が個人経営であり、法人経営の割合は約10.6%にとどまっています。
また、従業員数の構成を見ると「1人」が32.4%と最も多く、次いで「2人」が28.2%、「3人」が12.3%となっており、5人未満の小規模店舗が全体の約8割を占めています。
こうしたデータからも、 美容室は少人数で運営される小規模サロンが主流 であることが分かります。
(出典:厚生労働省「美容業の実態と 経営改善の方策」/
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000501316.pdf)
美容室は比較的少人数でも運営が可能であり、大規模な設備や広い店舗スペースを必要としないため、個人でも開業しやすい業態です。このような参入障壁の低さを背景に、新規出店は活発に行われており、美容室の施設数は増加傾向にあります。
厚生労働省の公表データによると、美容室の施設数は2020年の257,890件から、2024年には277,752件へと増加しています。
| 年度 | 施設数 |
|---|---|
| 2024年 | 277,752 |
| 2023年 | 274,070 |
| 2022年 | 269,889 |
| 2021年 | 264,223 |
| 2020年 | 257,890 |
(出典:厚生労働省「3 生活衛生関係」/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/24/dl/kekka3.pdf)
前述の通り、美容室は1〜3人程度の少人数でも運営できるケースが多く、大規模な設備や広い店舗面積を必要としません。そのため個人でも開業しやすく、小規模サロンを中心に新規参入が活発に行われています。
こうした背景から、美容室数は 「開業のしやすさ」と「安定した需要」を背景に今後も増加が見込まれており、市場としては拡大基調が続く と考えられます。

美容室業界は市場規模自体は拡大傾向にあるものの、実際の経営においてはさまざまな課題を抱えています。特に個人経営の小規模サロンが多い業界構造であるため、競争環境やコスト上昇など外部環境の変化による影響を受けやすい点には注意が必要です。
ここからは、美容室が直面している主な課題について解説します。
近年の美容室業界では、縮毛矯正や髪質改善、アイブロウなどの高付加価値メニューへの需要が高まる一方で、短時間・低価格を重視する利用者も増えており、ニーズの多様化が進んでいます。
また、ニーズの多様化に伴い、美容室業界では 「高付加価値型サロン」と「低価格・効率重視型サロン」への二極化 が進行しており、その中でも明確なコンセプトをもたない中間的なサロンは価格競争やブランド競争に巻き込まれやすくなっているのも実情です。
安定した集客や収益を確保するためには、他店との差別化戦略が重要となっています。
美容室は比較的参入しやすい業態であるため新規出店が相次ぎ、店舗数の増加により顧客獲得競争が激化しています。加えて、人口減少や節約志向の高まりを背景に、来店頻度を減らしたり施術内容を簡素化したりする利用者も増えています。
結果として、従来のように安定した売上を維持することが難しくなっており、 リピート率の向上や客単価アップが重要な経営課題 となっています。さらに、SNSを活用した情報発信やブランディングなど、集客手法の高度化も求められています。
近年は物価上昇の影響により、カラー剤やシャンプーといった材料費に加え、電気代や水道代などの光熱費も上昇しています。こうしたコスト増は、美容室の収益構造に大きな影響を与えています。
特に、 個人経営や中小規模のサロンでは価格転嫁が難しいケースも多く、利益確保が大きな課題となっています。 また、人件費の上昇も経営負担を押し上げており、業務効率化やメニュー構成の見直しなど、収益構造の改善が求められています。
美容室業界では、美容師の離職率の高さが長年の課題とされており、人材の確保と定着が難しい状況にあります。長時間労働や立ち仕事による身体的負担、給与水準などが影響し、継続的な雇用が難しくなるケースも少なくありません。
さらに、近年ではフリーランスとして働く美容師も増えており、サロン側は従来以上に人材確保が難しくなっています。加えて、 美容師の高齢化や後継者不足に悩むサロンも多く、事業承継やM&Aを検討する動きが広がっている点も特徴 です。

近年の美容室業界では、競争激化や人材不足、後継者問題などを背景に、事業承継や経営拡大を目的としたM&Aが増加傾向にあります。特に小規模サロンが多い業界構造の中で、単独での成長や継続が難しいケースも増えており、M&Aは経営課題の解決手段として重要性を高めています。
ここからは、美容室M&Aによく見られるパターン・動向を紹介します。
美容室業界では、店舗数の拡大や新エリアへの進出、人材確保などを目的として、美容室同士のM&Aが行われています。
特に大手・中規模チェーンでは、新規出店よりも既存店舗を買収することで、 商圏や顧客、美容師を一度に獲得できるため、スピーディーな事業拡大が可能となります。
また、既存ブランドの取り込みによる認知度向上や、高付加価値メニューの導入によるサービス強化などを目的としたM&Aも増えており、単なる規模拡大にとどまらない戦略的な活用が進んでいます。
近年では、大手美容室グループを投資ファンドが買収するケースも見られるようになっています。美容室は全国展開しやすく、店舗数の拡大によって収益成長を見込みやすいビジネスモデルであることから、投資対象として注目されています。
ファンドは買収後、人材採用の強化や店舗運営の効率化、出店戦略の見直しなどを進め、企業価値の向上を図ります。そのうえで、 将来的な株式上場や売却を目指すケースもあり、業界全体の再編にも影響を与えています。
個人経営や小規模サロンでは、M&Aに加えて「居抜き売却」や「事業譲渡」といった形での引き継ぎも増えています。M&Aが従業員や顧客、ブランドを含めて事業全体を引き継ぐのに対し、居抜き売却は店舗設備や内装などの物理的資産を中心に引き継ぐ点が特徴です。
買い手にとっては初期投資を抑えながら開業できるメリットがあり、売り手にとっても閉店コストを抑えつつ撤退しやすい方法となります。また、近年では 第三者に店舗運営を任せる「運営委託」を活用するケースも見られ、柔軟な事業承継の手段として広がっています。

美容室のM&Aは、売り手にとって事業承継や経営課題の解決につながる有効な手段です。特に個人経営のサロンが多い業界では、単独での継続が難しいケースもあるため、M&Aを活用することで円滑な引き継ぎや新たな成長機会を得られる可能性があります。
そこで次に、美容室のM&Aによる譲渡(売り手)側の主なメリットについて解説します。
美容室業界では、経営者の高齢化や後継者不在が大きな課題となっています。家族や従業員への承継が難しい場合でも、M&Aを活用することで第三者へ事業を引き継ぐことが可能です。
第三者へ事業を引き継ぐことで、長年築いてきた顧客基盤やブランドを維持したまま事業を存続でき、 単なる廃業と比べて従業員や顧客への影響を抑えやすくなります。
大手美容室グループの傘下に入ることで、資金力や集客力、ノウハウといった経営資源を活用できるようになります。これにより、単独では難しかったサービスの拡充や設備投資、人材育成などを進めやすくなります。
また、グループブランドの知名度を活かした集客や、仕入れコストの削減なども期待でき、 安定した経営基盤の構築につながる点もメリット です。
美容室のM&Aでは、借入金や個人保証を買い手に引き継げるケースがあり、経営者個人のリスク軽減につながります。特に長年の経営で負担となっていた債務から解放される点は大きな利点です。
また、M&Aによって店舗や顧客基盤、ブランドといった事業価値を現金化できるため、売却益を得られる可能性もあります。廃業時に発生する原状回復費用などを抑えられる場合もあり、 引退後の生活資金や新たな事業への投資資金を確保できる点も魅力 です。

美容室のM&Aは、売り手だけでなく買い手にとっても多くのメリットがあります。既存の経営資源を活用できるため、ゼロから事業を立ち上げる場合と比べて効率的に展開できる点が特徴です。
次に、美容室M&Aによる譲受(買い手)側の主なメリットを紹介します。
美容室のM&Aでは、店舗設備に加え、美容師や顧客、ブランドといった経営資源を包括的に引き継ぐことが可能です。特に、人気スタイリストを引き継げた場合は、 その美容師個人に付いている顧客ごと引き継げるケースも多く、M&A直後から一定の来店数や売上の確保が見込めます。
また、既存顧客やリピーターを引き継ぐことで、開業初期から安定した来店数を見込めるため、ゼロから集客を行う場合と比べてスムーズに事業を開始できます。
一方で、M&A後にスタッフが離職した場合は顧客流出につながる可能性もあるため、待遇面の整備や丁寧な引き継ぎが重要です。
美容室を新規に開業する場合、物件取得や内装工事、設備投資、人材採用、集客などに多くの時間とコストが必要です。M&Aを活用すれば、 経営基盤が整った状態で事業を開始できるため、開業までの期間短縮や初期投資の削減につながります。
また、既存の営業実績や地域での認知度を活かせる点もメリットです。近年では、異業種企業が美容業界へ参入するケースや、新ブランドの立ち上げや新エリア進出を目的としてM&Aを活用する動きも見られます。
美容室チェーンや大手企業では、M&Aを多店舗展開や商圏拡大の手段として活用するケースが増えています。既存店舗を取得することで、 短期間で店舗数を増やし、エリア展開を加速させることが可能 です。
店舗数の増加はブランド認知度の向上や広告効果の最大化につながるほか、仕入れや人材配置の効率化といったスケールメリットも期待できます。さらに、既存店舗とのノウハウ共有やメニュー開発、人材教育を通じて、グループ全体の競争力強化にもつながります。

美容室のM&Aを成功させるためには、売り手・買い手それぞれの立場で押さえるべきポイントを理解し、事前準備と戦略的な判断を行うことが重要です。
【譲渡(売り手)側のポイント】
美容室は競争が激しい業界であるため、 他店との差別化ポイントを明確に示せるかどうかが評価に大きく影響します。 また、感覚的な強みだけでなく、数値データに基づいた説明を行うことで、交渉を有利に進めやすくなります。
【譲受(買い手)側のポイント】
美容室は美容師個人に顧客が付く傾向が強いため、人材の定着が事業価値を大きく左右します。買収後の運営体制や雇用条件の設計が、M&Aの成否に直結すると言えます。
また、売り手・買い手ともに美容室M&Aの成功率を最大限高めるためには、 専門的な知識と経験をもつM&Aアドバイザーへ相談し、適切なサポートを受けながら進めることも重要 です。
市場規模の拡大が続く一方で、競争激化をはじめとした多くの課題を抱える美容室業界では事業承継や経営基盤の強化、成長戦略の手段としてM&Aの活用が進んでおり、売り手・買い手双方にとって有効な選択肢となっています。
ただし、美容室M&Aを成功させるためには、自社の強みの整理やリスクの把握など、事前準備が不可欠です。美容室のM&Aを検討する際は、専門的な知識と豊富な実績をもつパートナーの存在が重要となります。
創業1987年の老舗M&A会社として豊富な成約実績をもつ株式会社レコフでは、業界動向を踏まえた適切なアドバイスやサポートを提供しております。M&Aに関する疑問や具体的な検討を進めたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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