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外構工事業界のM&A動向

業界別M&A

2026.02.16更新日:2026.02.16

外構工事は住宅やビルディングの建設に伴って行われる工事であり、外構工事業界は建設工事業界の一部と言えます。そのため、外構工事業界は建設工事業界が抱える課題の影響を受けており、M&Aによる課題解決を図る方も多いでしょう。

外構工事業界では多くのM&Aが行われており、M&Aを譲渡・譲受のどちらの立場で行うかによってメリットは異なります。

今回は外構工事業界の課題やM&A動向を解説した上で、立場別でのメリットや成功するためのポイントを紹介します。

目次
 
 

外構工事業界とは?

外構工事業界とは、建物本体を除く敷地内や建物周辺の構造物などを設置する「外構工事」を行う外構工事業者の業界です。

外構工事で設置する構造物は、具体的に下記を指します。

  • 門柱、門扉
  • 郵便受け
  • アプローチ
  • 塀、生垣
  • 土間コンクリート
  • ウッドデッキ
  • カーポート
  • 物置 など

外構の多くは実用的な構造物であるものの、人目に付く部分であるためデザイン性も重視されます。住宅のイメージに合わせるため、住宅完成後に外構工事を行うケースが多い傾向にあります。

なお、外構工事と混同されやすい用語に「外装工事」があります。

外装工事とは、住宅の壁・屋根といった建物本体の外側設備や装飾の施工を行う工事です。例えば外壁塗装や屋根塗装、屋根材の交換、断熱材の外張り施工などが外装工事に含まれます。

外装工事は建物本体の機能にかかわる工事であり、一方で外構工事は建物本体以外の構造物にかかわる工事である点が両者の違いです。

外構工事業界の市場動向|縮小の要因も

外構工事業界の市場規模は縮小傾向にあり、外構工事業者が売上を高めることは難しくなりつつあります。外構工事業者の経営に携わる方は、業界が抱える課題を正しく認識しておきましょう。

以下では市場規模の縮小要因として考えられ、かつ今後の外構工事業界の課題でもある4つのポイントを解説します。

新設住宅着工戸数の減少による需要低下

外構工事は住宅などの新築時に付随して行われるため、新築住宅の数が減少すると市場規模の縮小につながります。

参考として、国土交通省が公表する建築着工統計調査報告では、令和6年の新設住宅着工戸数は792,098戸です。前年比で3.4%減であり、2年連続の減少となっています。

(出典:e-Stat 政府統計の総合窓口「建築着工統計調査報告」/
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040246999&fileKind=2

リフォーム業界においても、住宅リフォーム市場規模は横ばいから微減傾向で推移する見通しです。

(出典:市場調査とマーケティングの矢野経済研究所「住宅リフォーム市場に関する調査を実施(2025年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3877

住宅のリフォーム時には外構部分もリフォームが行われるケースがあるため、外構工事業者が売上を伸ばすにはリフォーム業界にも目を向ける必要があるでしょう。

経営者の高齢化による後継者不在問題の深刻化

帝国データバンクによると、2025年調査時点で後継者不在率が最も高いのは建設業となっています。

(出典:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025年)」/
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/

建設業には外構工事業界も含まれており、経営者の高齢化による後継者不在問題は深刻化している状況です。後継者がいないと事業の承継が行えず、最悪の場合は外構工事業者を廃業せざるを得なくなる可能性があります。

人手不足の深刻化

建設業界は就業者数がゆるやかに減少し続けており、同時に現役就業者の高齢化も進行しています。

一般社団法人 日本建設業連合会によると、2024年時点における建設業の就業者数は477万人です。そのうち55歳以上が約37%を占めていて、一方で29歳以下は約12%と低い水準になっており、全産業と比べ高齢化が著しく高くなっています。

(出典:一般社団法人 日本建設業連合会「4. 建設労働」/
https://www.nikkenren.com/publication/handbook/chart6-4/index.html

外構工事業界においても就業者数の減少と高齢化は起きており、人手不足が深刻化しています。現場の働き手が不足すると外構工事を行えなくなり、事業継続が困難となるでしょう。

新規参入の増加

建設業界で開業するには一般的に製造工場や建設重機を用意し、該当する工事の許認可取得が必要です。

しかし、外構工事業界は小規模な設備があれば始められ、必要な資材は仕入れで入手できます。外構工事は基本的に小規模であるため許認可が必要ないケースも多く、参入障壁が比較的低い業界です。結果として新規参入する業者が増加しており、競合との価格競争の激化につながっています。

中~小規模の外構工事業者は工事原価を低く抑えることが難しく、価格競争になると工事を受注できなくなるおそれがあります。

外構工事業界における今後の課題

外構工事業界における今後の最大の課題は、「人材の確保」と「近接業界との関係構築」です。2つの課題への取り組みが重要となるのには、下記の理由があります。

●マンションの大規模修繕工事が増加している

政府は老朽化するマンションの維持管理の適正化などを目的として、マンション管理適正化法を2020年に改正しました。2022年4月にはマンション管理適正評価制度もスタートし、マンションの管理状態などを評価する仕組みを作っています。2026年4月にもさらに法改正が施行されます。

(出典:国土交通省「マンション管理適正化法の改正概要」/
https://www.mlit.go.jp/common/001356471.pdf

マンションの維持管理が促進されることにより、外構工事も含めた大規模修繕工事が増加します。外構工事業者は大規模な外構工事に対応できる人材、特に許認可取得に欠かせない専任技術者の要件を満たす人材の確保が重要となるでしょう。

●空き家リフォーム市場への相次ぐ参入が起きている

新設住宅着工戸数の減少により、建設業界全体で空き家リフォーム市場への参入が相次いでいます。

国土交通省によると、住宅リフォーム・リニューアル工事の受注高は3年連続で増加していましたが、2024年における住宅リフォーム・リニューアル工事の受注高は約4兆1,318億円であり、前年同期比で3.3%減少しました。

(出典:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)」/
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001894226.pdf

外構工事業者が空き家リフォーム市場に参入するには、リフォーム事業者との協業が必要です。外構工事業者は住宅の新築に携わる建築会社とだけではなく、リフォーム事業者とも良好な関係を構築することが求められます。

外構工事業界のM&A動向

外構工事業界の課題である人材確保と近接業界との関係性構築を実現するには、M&Aの実施が最も近道です。実際に、近年ではM&Aを実施する企業も外構工事業界において増えています。

以下では、外構工事業界の主なM&A動向やM&Aの目的を3つに分けて解説します。

後継者不在問題の解決を目的としたM&A

経営者の高齢化に伴う後継者不在問題を解決するため、M&Aを通じて事業承継をするケースが増えています。

事業承継というと、従来は親族や従業員への承継がほとんどとなっていました。しかし近年は第三者への事業承継が認知されるようになり、有能な経営者を外部に求める手段としてM&Aが活用されています。

事業強化を目的とした小~中規模企業同士のM&A

外構工事事業の強化を目的とした、小~中規模企業同士のM&Aも目立っています。同業種同士のM&Aを行うとそれぞれの人材や施工技術を共有でき、商圏の違いによるサービス提供エリアの拡大も図れます。

小~中規模企業同士のM&Aでは、買収よりも合併の方がよく見られる傾向にあります。

また、同業種同士だけではなく、内装・外装工事業者やハウスメーカー・工務店などの隣接業種によるM&Aも行われています。

大手グループによるM&A

大手の建築グループは総合的な新築事業やリフォーム事業を展開しており、商圏や事業領域の拡大を目的として、M&Aにより外構工事業者を傘下に加えるケースがあります。

特に多いのが、都市部の大手グループによる地方の小~中規模な外構工事業者の買収です。

地方の外構工事業者は地域密着型のサービス・サポートを提供していることが多く、商圏拡大を目指す都市部の大手グループにとって有力なM&A相手となります。地方の顧客を抱えているため、リフォーム案件を取得しやすい点も魅力です。

【外構工事業界】M&Aによる「譲渡(売り手)側」のメリット

M&Aには事業や会社を売却する「譲渡(売り手)側」と、譲渡側から取得する「譲受(買い手)側」という2つ立場があります。

外構工事業界のM&Aによって得られるメリットは立場によって異なるため、自社の立場におけるメリットをあらかじめ把握しておきましょう。

以下では、外構工事業界のM&Aによる譲渡側のメリットを4つ紹介します。

従業員の雇用を守ることができる

外構工事業者のM&Aには買収や合併などいくつかのスキームがあるものの、いずれのケースでも従業員の雇用を守れる点がメリットです。

もしもM&Aではなく廃業を選択した場合は、自社の従業員を解雇しなければなりません。

若い従業員であれば次の働き口を見つけやすいものの、高齢の従業員はなかなか再雇用されず、路頭に迷う可能性があるでしょう。

また、就業規則に退職金の規定がある会社では、廃業時に従業員に退職金を支払う必要があります。経済的な困窮がある会社の場合、退職金の支払いも難しいケースは少なくありません。

従業員の雇用を守れるM&Aを選択すれば、従業員の再雇用先や退職金の支払いを心配せずに済みます。

後継者不在問題を解決に導ける

M&Aを行うことで、外構工事業者の後継者不在問題を解決に導けます。具体的な方法は「第三者への事業承継」と「事業の売却」の2つです。

第三者への事業承継では、吸収合併などのスキームによって外部の経営者に外構工事事業を承継してもらいます。

もう1つの事業の売却は、外構工事事業を他社に売却するスキームです。外構工事事業を必要とするM&A先に事業を売却することで、後継者不在の状態でも事業をスムーズに手放すことができます。

売却益を獲得できる

M&Aによって外構工事業者を売却することで売却益を獲得できます。株式譲渡を選択した場合は経営者が売却益を得られるため、リタイア後の生活資金への充当や、新規事業の準備資金への活用ができるでしょう。

また、中~小規模な外構工事業者の経営者は、金融機関から融資を受ける際に個人保証を設定しているケースが少なくありません。M&Aで会社の債務を譲受側に引き継いでもらえば、個人保証も解消されるメリットがあります。

大手事業者の傘下に入ることで安定経営を目指すことができる

外構工事業界は住宅需要の低下や新規参入の増加などにより、将来にわたって安定した経営ができるかを見通しにくい状況です。しかし、M&Aによって大手事業者の傘下に入ることで安定経営を目指せます。

大手事業者は商圏が広く、多角的な事業展開をしている点が特徴です。M&A前よりも外構工事の案件を受注しやすくなり、売上向上が期待できます。

【外構工事業界】M&Aによる「譲受(買い手)側」のメリット

次に、外構工事業界のM&Aによる譲受側のメリットを4つ紹介します。

譲受側の主なメリットは、ノウハウの獲得や事業参入のしやすさ、事業規模の拡大などが挙げられます。適切なM&A先を選択するために、自社がM&Aで何を獲得したいかを考えることが重要です。

買収先が有するノウハウをまとめて獲得できる

譲受側の会社は、買収先が有する人材・顧客・取引先などをまとめて獲得できます。これらのノウハウは事業拡大に欠かせない要素であり、M&Aによって業績向上を目指すことが可能です。

特に建設業界全体が人手不足となっている影響もあり、専任技術者などの貴重な人材を獲得できる点は大きなメリットです。人材が増えれば規模の大きい外構工事に対応しやすくなって、既存事業とのシナジー効果も見込めます。

短期間・低コストで新たな事業に参入できる

異業種が譲受側となった場合は、外構工事業者を買収することで短期間・低コストで新たな事業に参入できるメリットがあります。

外構工事業界は参入障壁が低いものの、事業に参入するには人材・設備の用意や顧客・取引先を獲得し、大規模な工事を行う場合は許認可の取得も必要です。準備にはある程度の資金と時間がかかり、スムーズに新規参入できるとは限りません。

しかし、人材・設備・顧客・取引先などは外構工事業者を買収すれば獲得できます。外構工事業界への参入を検討している異業種の会社にとっては、M&Aが最適な選択肢となるでしょう。

事業規模と事業エリアを拡大できる

外構工事業界のM&Aを行うことで、譲受側は事業規模と事業エリアを拡大できます。たとえば近接業界が外構工事業者を買収した場合は、自社の事業ポートフォリオに外構工事事業を加えて、既存事業に関連付けたサービス展開を行えます。

事業エリアの拡大は、特に地域密着の外構工事業者を買収した場合に得られるメリットです。地域における譲渡企業の高い認知度を活用できるため、対象地域でのサービス展開を効率よく行えます。

グループ体制の強化による事業の効率化・利益率の向上が見込める

譲受側が大手グループの会社であれば、グループ体制の強化による事業の効率化や利益率の向上が見込めます。

たとえば異業種である建設会社が外構工事業者を買収した場合は、建物本体と外構部分の受注から施工までをグループ内で行えるようになり、業務の効率化を実現可能です。

また、今までは元請けだった外構工事業者が下請けの外構工事業者を買収した場合は、自社で一貫して外構工事を取り扱えるようになります。自社一貫施工による利益率が向上でき、業務の質向上にもつながるでしょう。

【立場別】外構工事業界のM&Aを成功させるためのポイント

最後に、外構工事業界のM&Aを成功させるためのポイントを、譲渡側・譲受側の立場別に紹介します。

【譲渡(売り手)側の成功ポイント】

●自社のアピールポイントをまとめる

外構工事業者の売却額は、譲渡側の会社がどのような強みを持っているかに左右されます。「専任技術者となる人材が在籍している」「地域に強固な顧客基盤がある」「年間の受注件数が多い」などのアピールポイントをまとめ、譲受側に伝えましょう。

●従業員が働ける年齢を調べておく

外構工事業者を買収する譲受側にとって、大きな関心ごとの1つが「現在の従業員がどのくらいの年数働けるか」です。譲渡側は自社の従業員や職人の年齢を調べ、将来的に働ける年数をあらかじめ伝えておくと、譲受側との交渉をスムーズに進められます。

●M&Aの目的や売却期限を決める

外構工事業者がM&Aを実施する目的は、後継者不在問題の解決や経営基盤の強化など多岐にわたります。また、抱える課題によっては売却期限を設定したほうがよいケースもあります。

M&A先の検討時・交渉時に要点を見失わないよう、目的や売却期限はしっかりと決めましょう。

【譲受(買い手)側の成功ポイント】

●買収の目的を明確化し、目的達成ができる売り手を選ぶ

外構工事業界のM&Aによって譲受側が達成したい目的は「自社が同業種か異業種か」「獲得したいものが何か」などのポイントで異なります。買収の目的を明確化した上で、自社の目的達成につながる要素を備えた売り手を選び、M&Aの交渉を行いましょう。

●デューデリジェンスを実施する

デューデリジェンスとは、譲渡側の事業戦略や財務状況、法的なリスクなどを調査することです。「譲渡側に簿外債務がないか」「外構工事に関して取引先や顧客との訴訟がないか」などを調査することによって、M&A後のトラブルを軽減できます。

●PMIの準備を事前に進めておく

PMIとは、M&A成立後に実施する経営・業務・意識などの統合プロセスです。M&Aで期待していた効果が得られるかどうかは、PMIを成功させられるかどうかにかかっていると言えます。

2社の統合を進める際は、業務の進め方や従業員の意識などで課題が発生する可能性があります。課題への対策をスムーズに実施できるよう、PMIの準備を事前に進めておくことが大切です。

また、譲渡側・譲受側のいずれにも共通するポイントとして、「M&Aに詳しい専門家への相談」が挙げられます。

M&Aは手続きが複雑であり、慣れていないとM&A先との交渉や契約の締結で失敗するおそれがあります。M&Aを成功させるためには、自社の目的を明確化した段階でM&Aに詳しい専門家に相談し、M&Aの進め方や交渉のやり方などをサポートしてもらうと良いでしょう。

まとめ

外構工事業界には住宅需要の低下や後継者不在問題、深刻な人手不足などの課題があります。小~中規模な同業種でのM&Aはもちろん、大手グループによる買収や隣接業種が行う買収も多く見られる業界です。

外構工事業界のM&Aによるメリットは、譲渡側であれば従業員の雇用維持や後継者不在問題の解決などが挙げられます。対して譲受側は、外構工事に必要なノウハウの獲得や事業拡大・参入などが主なメリットです。

外構工事業界のM&Aを検討する方は、紹介した立場別のポイントを参考にして、M&Aに詳しい専門家への相談を行うことがおすすめです。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

 
 
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