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業界別M&A
近年、多くの業界で買収や合併の動きが活発化しています。鉄筋工事業界においても、M&Aを実施または検討する企業が増えているのが現状です。
鉄筋工事業界のM&Aを成功させるには、業界の市場動向やM&A動向を正しく把握しておく必要があります。
今回は、鉄筋工事業界の市場動向とM&A動向、M&Aによるメリットについて詳しく解説します。鉄筋工事業界で行われたM&Aの事例も紹介するため、ぜひ参考としてお読みください。
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鉄筋工事業界とは、鉄筋コンクリート(RC)構造物に用いられる鉄筋の加工・組立てを行う業界です。建設業界の一部であり、建設業許可の専門工事の1つである鉄筋工事業を請け負う会社を鉄筋工事会社と言います。
鉄筋工事会社が行う主な事業内容は、下記の通りです。
鉄筋工事会社は、ビルやマンション、橋・トンネル・高速道路などの構造物の基礎に関わる仕事です。建築物や構造物の安全性と品質を保証する重要な仕事と言えるでしょう。
鉄筋工事会社の運営には、建設業許可の取得が必須です。建設業許可を取得するには、経営業務管理責任者の要件や専任技術者の要件などを満たす必要があります。

鉄筋工事業界の市場規模は、縮小傾向にあります。アイアンショックやウッドショック、円安などにより建設関連資材の価格が高騰していることから、今後もしばらくの間は厳しい状況が続くでしょう。
鉄筋工事業界での事業継続または新規参入を検討している場合は、市場動向がどのように変化しているのかを正しく把握することが大切です。
ここでは、鉄筋工事業界の市場動向を詳しく解説します。
新設住宅着工戸数の減少や公共工事の予算削減により、鉄筋工事業界の市場動向は減少傾向にあります。
少子高齢化によって戸建て住宅を必要とする人が減っていること、分譲住宅や賃貸物件を選択する人が増えたことが、新設住宅着工戸数が減少した理由の1つです。
公共工事の予算が削減されたことも、鉄筋工事業界の市場規模の縮小に大きく影響しています。また、都道府県税の減収や地方交付税・臨時財政対策債の減額により、公共工事の予算は減少しています。
一方で、国内のインフラは老朽化が進んでいるため、今後はインフラ整備事業が拡大する見込みです。道路・トンネル・橋梁などの点検や修繕には、鉄筋工事業界の力が必要不可欠です。
少子高齢化の影響を受け、鉄筋工事業界でも人手不足の状況が続いています。
職人の高齢化と若手人材の不足により、労働力不足に陥っている鉄筋工事会社は少なくありません。また、鉄筋工事を含む建築業界では多重下請構造が常態化しています。熾烈な価格競争によって、二次請け・三次請けを担う下請業者など規模の小さな会社は厳しい状況にあります。
鉄筋工事会社の仕事は、体力が求められる上に土埃や汗によって汚れやすく危険を伴うことから、「3K(きつい・汚い・危険)」と言われた時代もありました。しかし、近年は給料が良くて休暇が取れる希望を持てる仕事として「新3K(給料・休暇・希望)」が提唱されています。
鉄筋工事業界にとって、人材確保と安定した雇用の定着は重要な課題です。
規模の大きい企業を中心に、テクノロジー化が進められています。水平スライドクレーンや多機能ロボットを実装した次世代生産システムや3Dプリンタの導入などにより、生産性が向上しています。
最新技術の導入は、鉄筋工事業界が抱える労働環境や人材不足などの課題解決に役立つ取り組みです。
鉄筋工事業界では、M&Aを実施する会社が増えつつあります。鉄筋工事業界に多く見られるM&Aの傾向は、下記の通りです。
小・中規模の同業者同士のM&Aは、双方の経営資源を活用して基盤強化を図る目的で行われるケースが多く見られます。大規模業者による中小規模業者の買収の場合は、新たな技術と人材の獲得が主な目的です。
また、経営者の高齢化が進んでいることから、後継者不足の問題を解決するためにM&Aを検討する会社も増加しています。

鉄筋工事業界のM&Aには、多くのメリットがあります。代表的なメリットは、「従業員の雇用を維持できる」「売却益を獲得できる」「経営リスクを軽減させられる」の3つです。
ここからは、鉄筋工事業界のM&Aにおける譲渡(売り手)側のメリットを詳しく解説します。
M&Aを実施する場合、譲渡(売り手)側は従業員の雇用を維持することが可能です。経営難や後継者不足などの問題で廃業を選択するケースもありますが、廃業するとなれば従業員は雇用の場を失うことになります。
一方、M&Aで会社を譲渡する場合は、従業員の雇用を譲受(買い手)側に引き継ぐことができます。今後の経営に不安を抱えている経営者にとって、従業員への影響を最小限に抑えられる選択と言えるでしょう。
鉄筋工事会社を売却することで、経営者は売却益(創業者利益)を獲得できます。売却益は、企業価値によって金額に差が生じます。企業価値を判断する要素は、市場動向や業績、保有する経営資源など多岐にわたります。業績が好調な場合や譲受側にとってメリットが大きい経営資源を保有している場合は、高額な売却益が期待できるでしょう。
手にした売却益は、老後資金に充てたり新たな事業展開に活用したり、経営者が自由に使うことができます。
市場規模が減少傾向にある中で、経営リスクに不安を抱える経営者は少なくありません。M&Aが成功すれば、経営が安定して資材価格の変動や需要の減少などによる経営リスクの軽減につなげられます。売却先が大手企業の場合は、市場動向が厳しくても安定した経営が望めるでしょう。
経営権を譲渡すると連帯保証や担保などが解除されるため、経営者は不安やプレッシャーから解放されます。
大手企業の傘下に入る場合、譲受企業がもつブランド力を活用できます。安定した受注確保につながれば、さらなる事業成長も見込めるでしょう。また、大手企業のブランド力は、取引先や従業員に安心感を与えることにもつながります。
鉄筋工事業界で生き残るには、資金面での不安や人材不足など自社の弱点を補ってくれる企業と手を結ぶのも1つの方法です。

鉄筋工事業界のM&Aは、譲受(買い手)側にも大きなメリットがあります。買収や合併を検討している場合は、どのようなメリットが得られるのかチェックしておきましょう。
ここでは、鉄筋工事業界のM&Aにおける譲受(買い手)側のメリットを詳しく解説します。
即戦力となる人材を確保できることは、M&Aを実施するメリットの1つです。従業員を一から育てるには時間と手間がかかります。人手不足に悩んでいる企業にとって、優れた人材を取り込めることは大きなメリットと言えるでしょう。
しかし、鉄筋工事業界は職人気質な人が多く上下関係にも厳しい傾向にあります。買収後の労働環境や雇用条件の変化が従業員のモチベーションに悪影響を及ぼす可能性もあります。丁寧に説明したりコミュニケーションを取ったり、従業員との間に抵抗感が生じないように対応しましょう。
鉄筋工事業界に限らず、新規事業に参入するにはまとまった資金が必要となります。実績やノウハウがない業界への参入はリスクが伴うため、できるだけコストは抑えておきたいところです。
鉄筋工事業界は、他の業界に比べて新規参入が少ない傾向にあります。コストを最小限に抑えて円滑に事業展開したい場合は、すでに実績がありノウハウや優れた人材、取引先を保有する鉄筋工事会社を買収する方法がおすすめです。リスク分散につながるだけでなく、既存事業との相乗効果で収入の安定化も期待できるでしょう。
M&Aは、事業規模やシェアの拡大を目指したい場合も効果的です。M&Aが実現すれば有形・無形を問わず譲渡側の資産を取り込めるため、短期間で企業成長を実現できます。
同業同士のM&Aであれば販路や受注の拡大につながり、隣接分野とのM&Aであれば総合工事業者としてアピールできるようになります。経営の多角化により、さまざまな経営リスクに備えることも可能です。
事業規模・シェアの拡大はブランド力の向上にもつながるため、競合他社に差をつけられるというメリットもあります。

鉄筋工事業界のM&Aを成功させるためには、どのような目的や手法で実施されたのかを知ることも大切です。
ここでは、3つの事例を挙げて、買い手・売り手側の大まかな企業情報とM&Aの実施内容を紹介します。
三和建設株式会社は、2020年6月に株式会社コアー建築工房とM&Aを実施しました。
M&Aの詳細は、下記の通りです。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社コアー建築工房 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 三和建設株式会社 |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
三和建設株式会社は、官公庁の土木工事、物流施設や商業施設などの建築工事を行う総合建設会社です。株式会社コアー建築工房は、⼤阪南部を中⼼に木造注文住宅の設計や施工、販売を行っています。30年以上黒字経営を続け、過去最高利益を記録したタイミングでM&Aに至りました。
鉄骨と木造という対極的な2社が1つになることで、サービスや組織に新たな価値を生み出しています。
小野建株式会社は、2019年10月に森田鋼材株式会社の株式を取得して完全子会社化すると公表しました。
M&Aの詳細は、下記の通りです。
| 譲渡(売り手)側 | 森田鋼材株式会社 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 小野建株式会社 |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
小野建株式会社は、地域に密着した鋼材の販売や加工、土木建築工事の請負などを行っています。森田鋼材株式会社は、鉄筋丸棒の販売や加工、鉄筋工事を行う鉄筋専門会社です。
森田鋼材株式会社が持つノウハウや顧客基盤を引き継ぐことは、小野建株式会社のさらなる飛躍につながると判断し、M&Aに至りました。
森田鋼材株式会社は、2024年3月に三豊鋼業株式会社の株式を取得しました。
M&Aの詳細は、下記の通りです。
| 譲渡(売り手)側 | 三豊鋼業株式会社 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 森田鋼材株式会社 |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
小野建株式会社の子会社である森田鋼材株式会社は、地域密着型の鉄鋼卸売事業を展開しています。三豊鋼業株式会社は、関西エリアを中心に数多くの取引先を抱える鋼材販売会社です。
グループ会社の販売シェアの向上と販売エリアの拡大を実現するために、M&Aを実施しました。M&Aにより、兵庫県内の拠点は5件となりました。

鉄筋工事業界のM&Aを成功させるポイントは、譲渡(売り手)側・譲受(買い手)側で異なります。自社にとってメリットが大きいM&Aとなるように、意識すべきポイントをチェックしておきましょう。
以下では、鉄筋工事業界のM&Aを成功させるポイントをそれぞれの立場別に解説します。
鉄筋工事業界のM&Aにおける譲渡(売り手)側のポイントは、以下の通りです。
●自社の強みをアピールする
M&Aを成功させるには、自社の強みをしっかりとアピールすることが大切です。魅力的な要素が多いほど、複数の企業に興味を持ってもらえます。まずは自社の強みを明確にしましょう。
独自の工法・顧客基盤・ブランド力など、他社より優れた魅力があるほどM&Aを有利に進められます。
●シナジー効果を見込める売却先を選ぶ
M&Aで自社に不足している部分を補うことができれば、コスト削減や売上拡大、新規顧客の獲得などのシナジー効果につながります。シナジー効果を得るためには、売却先が持つ強みや自社との相性を見極めることがポイントです。
「相補的な要素を持っているか」「市場の変化に対応できるか」を考慮して、共に成長できる売却先を選びましょう。
●条件交渉は慎重に行う
M&Aを成功させるためには、納得のいく形で売却できるように条件交渉を慎重に行うことも重要です。売却価格はもちろん、取引先や従業員への影響も考慮して話し合いを進めましょう。
基本合意で条件がまとまったタイミングで条件を追加するのはNGです。売却先に不信感を与えるリスクがあるため、後出しの条件交渉は避けましょう。
鉄筋工事業界のM&Aにおける譲受(買い手)側のポイントは、以下の通りです。
●M&Aの目的を明確にする
M&Aを実施するにあたり、まずは目的を明確にします。「事業領域の拡大」「企業価値の向上」「販売エリアの拡大」など、M&Aを行う理由をはっきりさせておきましょう。
M&Aによって得られるシナジー効果を具体的にイメージすることで、最適な買収先を選びやすくなります。
●リターンとリスクを見極める
買収先の経営資源を引き継ぐことで得られるリターンと考えられるリスクを洗い出しておきましょう。考えられるリスクには、簿外債務や偶発債務などの財務リスク、許認可や取引先との契約に関する法務リスク、未払残業代や事業の将来性といった経営リスクなどがあります。
リスクがリターンを上回るおそれもあるため、慎重に見極めましょう。
●組織統合と人材マネジメントは段階的に進める
組織統合や人材マネジメントは、現場の抵抗感が大きくならないように段階的に進めることがポイントです。万が一優秀な人材が流出することがあれば、期待していたシナジー効果が得られなくなる可能性があります。
従業員の不安や不満につながらないように、旧経営陣や現場の担当者とコミュニケーションを図ることが大切です。
鉄筋工事業界のM&Aを円滑に進めるために、まずは業界情報やM&Aに詳しい人に相談してみましょう。
鉄筋工事業界のM&Aに関する主な相談先は、次の3つです。
商工会は相談できるのが会員に限られます。また、金融機関は中小規模のM&Aには対応していないケースもあります。
一方、M&Aアドバイザーは紹介できる候補企業が多く、相談からクロージングまでトータルでサポートしてもらうことが可能です。M&Aに関する豊富な専門知識を有しており、自社にとってメリットが大きいM&Aを目指せます。
鉄筋工事業界では、新設住宅着工戸数の減少や公共工事の予算削減によって市場規模が縮小傾向にあります。しかし、国内のインフラは老朽化が進んでいるため、インフラ整備事業に関しては拡大が期待できるでしょう。
鉄筋工事業界の課題として、人材確保と安定した雇用の定着などが挙げられます。複雑な課題を解決するために、M&Aを選択する経営者も少なくありません。
鉄筋工事業界のM&Aを成功させるには、慎重な企業選びやリターンとリスクの見極めなどが必要不可欠です。M&Aを検討している方は、実績が豊富なM&Aアドバイザーに相談してみましょう。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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