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【NPO】M&A・事業承継の考え方や実現可能なスキーム

M&A初級編

2026.01.13更新日:2026.01.13

NPOは、社会的な課題の解決や公益の増進を目的として活動する団体で、国内外で幅広い分野において様々な取り組みを行っています。営利を目的とせず、活動の成果を社会に還元することが基本方針であり、行政や企業、個人と連携しながら社会的価値を生み出しています。

しかし、近年ではNPOも一般的な企業と同様に、組織の持続的な運営や事業の引き継ぎといった課題に直面するケースも増加しています。一般企業のように株式譲渡によるM&Aができないため、事業承継や組織再編を行う際には独自のスキームを検討する必要があります。

そこで今回は、NPOの基本的な仕組みや資金調達の方法を整理したうえで、NPOのM&Aや事業承継に活用できる具体的なスキームについて詳しく紹介します。

目次
 
 

NPOとは?

NPOとは、営利を目的とせず、社会貢献活動や公共の利益を目的として運営される団体のことです。「Non-Profit Organization」の略称であり、日本語では「非営利組織」や「非営利団体」と呼ばれます。

NPOには個人や企業が参加し、社会的な課題の解決や地域コミュニティの活性化、環境保護など幅広い分野で活動します。

一般企業との大きな違いは、「営利を追求せず、活動成果を組織内部に還元しない点」です。非営利団体としての透明性や説明責任が求められるほか、ボランティアや寄付、助成金などを主な資金源として活動を維持しています。

NPOは地域社会や特定の課題に対して直接的な貢献を行うことから、市民や行政、企業と連携することで、より持続可能で社会的な価値の高い取り組みを展開できます。

また、設立や運営に関する法制度も整備されており、日本では「特定非営利活動促進法」に基づいて法人格を取得することで、活動の信頼性や資金調達の安定性を確保できます。

NPOの活動分野

NPOは多岐に渡る分野で活動しており、国内では法律(特定非営利活動促進法第八十一条)により下記分野での活動が定められています。

  • 保健・医療・福祉の増進
  • 社会教育の推進
  • まちづくりの推進
  • 観光の振興
  • 農山漁村・中山間地域の振興
  • 学術・文化・芸術・スポーツの振興
  • 環境の保全
  • 災害救援
  • 地域安全
  • 人権の擁護・平和の推進
  • 国際協力
  • 男女共同参画社会の形成の促進
  • 子どもの健全育成
  • 情報化社会の発展
  • 科学技術の振興
  • 経済活動の活性化
  • 職業能力の開発・雇用機会の拡充支援
  • 消費者の保護
  • (1)~(18)の活動団体の運営・活動に関する支援
  • 都道府県や指定都市が条例で認めたその他の活動

上記の活動を通して、NPOは多様な社会活動に柔軟に対応し、市民社会の持続的発展に寄与しています。

NPOとNGOの違い

NPOとよく混同されやすいNGO(Non-Governmental Organization)は、政府から独立した組織のことで、「非政府組織」とも呼ばれます。国際的な課題や人道支援、環境保護、発展・開発といった地球規模の問題に自発的に取り組む点が特徴です。国内活動に限定される場合もありますが、多くは国境を越えて活動する国際的団体を指します。

一方、NPOは国内の社会貢献活動に重点を置くことが多く、地域社会や特定のテーマに根ざした活動を行います。資金源や法的手続きもNGOとは異なり、日本では特定非営利活動促進法に基づいた法人格取得が可能です。

NPOは地域密着型で国内向けの活動を主軸とし、NGOは国際的・広域的な課題への対応を主な目的としている点が明確な違いと言えます。

NPOの主な4つの形態

NPOと一口に言っても、運営条件によって形態がいくつかに分類されます。NPOの運営形態は、大きく「任意団体」「NPO法人」「認定NPO法人」「特定認定NPO法人」の4種類です。各形態には法的な位置づけや活動の範囲、税制上の扱いなどに違いがあります。

ここからは、各形態の概要や特徴、条件について解説します。

NPO団体(任意団体)

NPO団体(任意団体)とは、法的な法人格をもたず、複数の市民が共通した目的のもと任意で結成する組織です。なお、広義のNPOには、NPO法人や認定NPO法人など法人格を持つ団体も含まれる点に注意が必要です。

法人格をもたないNPO団体は、登記や設立手続きが不要で自由度が高く、誰でも名乗るだけで設立できます。柔軟に活動を始められるため、NPO活動の入門的な形態として広く用いられます。

その一方で、NPO団体には法人格がないため契約や寄付金の受領、資産保有などに制限があり、団体としての活動の拡大には限界があります。

NPO法人

NPO法人は、特定非営利活動促進法に基づき、都道府県または政令指定都市に認証されて設立される法人団体です。

任意団体と異なり法人格をもっており、契約や資産管理、寄付金受領などの権利も法人として認められます。事業の安定性や社会的信頼度が向上するため、比較的規模の大きい事業契約が締結しやすくなる点も魅力です。

その一方で、活動内容や組織運営に関する法令順守義務があり、より透明性の高い運営が求められます。また、定款に基づく分野の活動しか行えないため、それ以外の分野に携わりたい場合は再度手続きが必要となる点にも注意が必要です。

認定NPO法人

認定NPO法人とは、NPO法人としての法人格を取得したうえで、所轄庁が定める一定の基準を満たしたと認定されたNPO法人を指します。市民や企業からの寄付を促進し、より安定した社会貢献活動を支援するために設けられた「認定NPO法人制度」に基づく運営形態です。

認定NPO法人制度では、公益性の高い活動や適正な運営を行う団体に認定を与え、寄付者や法人に対する税制上の優遇措置を適用することで、活動資金の安定化を図っています。

認定NPO法人になることで、寄付者は所得控除や税額控除を受けられます。寄付金が集まりやすくなるため、活動資金の確保や事業の継続に役立ちます。また、法人自身も運営の透明性を高めることが求められ、ほかのNPO法人の模範となる役割も担います。

認定を受けるには、所轄庁が定める公益性や組織運営の基準を満たす必要があるほか、定期的な報告や会計監査の実施など、透明性と適正性を確保するための要件をクリアすることも求められます。

特定認定NPO法人

特定認定NPO法人とは、認定NPO法人制度の一部要件が緩和された上で認定を受けた設立後5年以内のNPO法人を指します。設立間もないNPO法人でも早期に寄付を受けやすくし、活動資金の安定化や事業展開を支援するために設けられた「特例認定NPO法人制度」に基づく運営形態です。

通常、認定NPO法人になるためには、一般市民からの支援状況を判断する「パブリック・サポート・テスト(PST)」を受けなければなりません。しかし、設立後5年以内のNPO法人の場合、特例認定NPO法人制度によるスタートアップ支援の観点からPSTが免除され、設立直後でも認定取得が可能です。

特定認定NPO法人になることで、認定NPO法人と同様に寄付者は所得控除や税額控除の対象となり、設立間もない団体でも資金を集めやすくなります。また、法人自体も透明性の高い運営が求められ、将来的には認定NPO法人としてのステップアップも可能です。

NPOの資金調達方法6つ

NPOは一般的な株式会社のような営利企業とは異なり、利益追求を目的としない社会貢献を目的とするため、資金調達の方法も独自の工夫が求められます。

NPOの主な資金源は、下記の6種類です。 。

  • 会費
  • 寄付金
  • 事業収入
  • 助成金
  • 補助金
  • 借入金

NPOにとって会費や寄付金は運用の自由度が高く、活動資金として幅広く活用できますが、規模の拡大や安定性には限界があります。

一方、事業収入や助成金・補助金は、活動の持続性に直結する安定的な資金源となりますが、収入確保には審査や条件の制約が伴う点に注意が必要です。

NPOの資金調達に関する課題

NPO法人には複数の資金調達方法がある一方で、多くの課題を抱えていることも実情です。

内閣府が公表した「令和5年度 特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、年間収益が1,000万円を超えるNPO法人は全体の41.7%にとどまり、半数にも満たないことが分かりました。

また、収益構成を見ると約8割が事業収益で、補助金・助成金は1割程度となっています。こうした状況から、資金調達はNPO活動の持続性を確保するうえで大きな課題であることが読み取れます。

(出典:内閣府「2023年度(令和5年度) 特定非営利活動法人に関する実態調査」/
https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/R5_houjin_report.pdf

特に、融資による資金調達の難しさは深刻です。近年では借入金の活用事例も増えていますが、NPO向けの融資制度は十分とは言えません。また、寄付による支援を促す環境も整備されておらず、そもそも寄付制度の認知度が低いことも課題の一因です。

上記の背景から、NPO法人は資金確保のために多角的なアプローチが求められます。

資金調達に関する課題の解決策

NPOが抱える資金調達の課題解決に向けては、「融資の活発化」と「寄付の拡大」、さらに「NPO法人の譲渡」が有効な手段として挙げられます。

●融資の活発化

日本政策金融公庫などの融資制度を活用し、決算情報の開示や信用保証制度を整備することで、NPO法人でも資金調達の道を広げられます。結果として、活動資金の安定化や事業拡大の余地を確保することが可能です。

●寄付の拡大

市民ファンドの活用や広報活動を通じて寄付者からの「活動内容や意義の理解と共感」を得ることで、安定的な支援の確保につながります。結果として、長期的な活動の持続性を高めることが期待できます。

●NPO法人の譲渡

資金不足で事業継続が困難な場合は、解散するのではなくM&Aによる法人譲渡を行って活動の継続性や利益確保を図るのも有効です。NPO法人を譲渡することで、地域や社会における活動の価値を維持しながら、事業運営の安定化を図れるでしょう。

【NPO】M&A・事業承継の考え方

そもそもM&Aとは、「Merger and Acquisition」の頭文字をとった略称で、企業や組織の経営権や事業をほかの組織に譲渡・統合することを指します。

大きく「合併(Merger)」と「買収(Acquisition)」の2つに分けられます。

合併は複数の法人が統合して新たな法人を設立する「新設合併」や、既存の法人が他法人を吸収する「吸収合併」があります。

一方、買収は株式などの法人の持分を譲渡して支配権を取得する「株式譲渡(ストックディール)」や、法人が有する権利義務を譲渡する「事業譲渡(アセットディール)」といった方法が代表的です。

近年では、製造業やサービス業をはじめ幅広い業界でM&Aが活発化しており、企業戦略や事業承継の手段として注目されています。NPOも例外ではなく、後継者問題の解決やさらなる事業成長を目的にM&Aを検討するケースが増えています。

NPOは「株式譲渡」でのM&Aを実施できない

株式会社などの一般的な事業会社には、株式を通じて法人の支配権や経済的利益を示す「持分」が存在します。

しかし、NPOは非営利法人・団体であるため、株式会社が有するような持分は存在しません。

また、NPO組織の支配権は株主権ベースではなく、理事会や定款に基づく運営規定で定められるため、法人の支配権を他社に承継する株式譲渡型のM&Aは原則として適用できません。

そのため、NPOが事業承継やM&Aを検討する際には、法人の持分譲渡に頼らない別のスキームを検討する必要があることを念頭に置いておきましょう。

NPOが実施できる主なM&Aスキーム

前述の通り、NPOは株式会社のように株式を発行していないため、株式譲渡によるM&Aは実施できません。しかし、「事業譲渡」「合併」「業務提携」「構成員の変更」のいずれかを行えば、事業や法人の承継を実現することが可能です。

最後に、NPOが実施できる主な4つのM&Aスキームについてそれぞれ詳しく解説します。

事業譲渡

事業譲渡は、NPOが行っている特定の事業をほかの法人へ移転する手法です。契約によって、事業内容や資産・負債・契約関係などを包括的または部分的に移すことができます。株式譲渡が不可能なNPOにとって、最も現実的かつ利用しやすいM&Aスキームと言えるでしょう。

譲渡する事業を限定できるため、組織全体の存続と並行して事業再編が可能になる点も特徴です。ただし、債務や契約の引継ぎには個別同意が必要となることから、事務手続きの負担が大きいというデメリットもあります。

合併

合併は、2つ以上のNPO法人を1つにまとめる手法です。NPO法人同士の合併の場合、会社法に基づく営利法人の合併とは異なり、特定非営利活動促進法や各法人の定款に基づいて行われます。

吸収合併では既存法人が他法人を取り込み、新設合併では新たに法人を設立して既存法人を統合することが可能です。合併により法人格や運営権を統合でき、資源や人材を集約して活動基盤を強化できる点がメリットです。

一方、合併には所轄庁の認証や公告など法的手続きが必要で、時間とコストがかかることが課題となります。

業務提携

業務提携は、NPO法人同士が契約を結び、共同で事業を運営したり資源を共有したりする手法です。法人格を持つ団体であれば契約主体が明確になり、責任の所在も整理されやすいという利点があります。任意団体でも理論上は提携可能ですが、法的拘束力が弱いため、実務上は不安定になりがちです。

尚、業務提携は資本の移動が伴わないほか法人の独立性も保たれることから、完全なM&Aにはあたらないものの、事実上の統合や事業効率化の手段として有効に活用されるケースも少なくありません。リスクを抑えながら協力関係を築ける柔軟な選択肢と言えるでしょう。

構成員の変更

構成員の変更とは、法人の意思決定機関(社員総会・評議員会など)や業務執行機関(理事・監事など)のメンバーを入れ替えることによって、実質的な経営権や運営権を移す方法です。

株式や持分の譲渡ができないNPOにおいて、実務上の支配権移譲の手段として用いられる傾向にあります。特に理事や社員の構成が変わることで、法人の方向性や活動方針を大きく変えることが可能です。

ただし、法的に支配権を移す手法ではなく、あくまで人事の変更に基づく運営権の移行であるため、任意団体では原則として実施できないことに注意しておきましょう。

まとめ

社会貢献活動や公共の利益を目的として運営されるNPOは、社会的な役割が大きい一方で、資金調達の難しさや後継者不足といった課題を抱えています。寄付や助成金に依存しやすく、収益の安定性に欠けることから、事業の持続可能性をいかに確保するかが大きなテーマとなっています。

また、NPO法人は一般企業のような株式譲渡は行えず、事業譲渡や合併、業務提携といった独自のM&Aスキームが必要となります。こうした状況でスムーズなM&Aの実施を目指すためには、専門的な知見を持つ支援者の存在が欠かせません。

NPOの事業承継やM&Aを検討する際には、豊富な実績を有するM&Aアドバイザーに相談することで、最適な選択肢を見出し、持続的な活動基盤を築くことが期待できます。株式会社レコフではNPOの事業承継に関する相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

 
 
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