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業界別M&A
デジタル・クラウドの普及に伴い、ソフトウェアをインターネット経由で提供・利用するSaaS(Software as a Service)は、企業のIT戦略において欠かせない存在となりました。オンプレミス型のシステムに比べ、導入コストの低さや柔軟な拡張性などが評価され、幅広い業界で導入が進んでいます。
こうした成長市場では、事業拡大や新規サービス獲得の手段として、M&A(企業の合併・買収)が重要な戦略の一つとなっています。SaaS業界のM&Aは、売り手・買い手双方にとって大きなメリットが期待でき、競争力強化やEXIT戦略としても注目されています。
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事業承継・譲渡売却は
SaaS(サース)とは、「Software as a Service」の略称で、インターネットを通じてソフトウェアを提供・利用する形態を指します。従来型のパッケージソフトのように、自社サーバーにインストールする必要がなく、ブラウザや専用アプリを通じてサービスを利用できる点が特徴です。
また、SaaSと似た言葉に「IaaS」「PaaS」「CaaS」がありますが、いずれも似て異なるクラウドサービスの形態です。
●IaaS(Infrastructure as a Service)
仮想サーバーやストレージなどの基盤環境を提供するサービス
●PaaS(Platform as a Service)
アプリ開発や運用に必要なプラットフォームを提供するサービス
●CaaS(Container as a Service)
コンテナ型のアプリケーション環境を管理・提供するサービス
SaaSは、上記の基盤やプラットフォーム上で動作する「完成されたソフトウェア」を直接利用できるサービスとなります。
SaaS業界は、企業のデジタル化やリモートワークの拡大とともに急速に成長しています。導入の容易さや拡張性の高さから、業務効率化やコスト削減を目的として多くの企業が採用しており、CRMや会計、人事、プロジェクト管理など、幅広い分野でサービスが提供されています。
また、従量課金やサブスクリプションモデルを中心とした収益構造は、安定したキャッシュフローを生みやすく、投資家や事業買収の対象としても注目されています。
世界のパブリッククラウドサービス市場はSaaS・IaaS・PaaS・CaaSを含め順調に拡大しており、2023年には売上高が6,319億ドル(約97兆円)に達しました。
中でもSaaS市場は堅調な成長を続けており、2023年には2,800億ドルに到達しました。2026年には4,760億ドルにまで拡大すると予測されています。過去数年間の売上高推移を見ても、毎年確実に成長していることが分かります。
【SaaSの売上高の推移および予測(2022~2026年)】
| 実測値 | 2022年 | 2,150億ドル |
|---|---|---|
| 2023年 | 2,800億ドル | |
| 予測値 | 2024年 | 3,280億ドル |
| 2025年 | 3,910億ドル | |
| 2026年 | 4,760億ドル |
日本国内においてもパブリッククラウドサービス市場は高い成長率を示しており、2024年には前年比26.1%増の4兆1,423億円に達すると見込まれています。
ただし、市場シェアは米国企業が大半を占めており、上位はAmazonやMicrosoft、Googleなどの大手企業が独占している状況です。加えて、新規参入はしやすい一方で、スタートアップ企業が多数存在することから、シェア争いは激化しています。
また、SaaSは高度な技術力が求められる分野であるため、専門性の高い人材不足が競争環境に影響することも少なくありません。企業は競合優位性を確立するだけでなく、優秀な人材をいかに確保するかも重要な課題となっています。
(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書|第8節 データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向」/
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd218200.html)

SaaS業界では、競争優位性の確保や人材獲得、事業成長の加速を目的として、M&Aを活用する企業が増えています。
ここからは、SaaS業界におけるM&Aの主なパターンや目的について詳しく紹介します。
SaaS業界で特に多いのが、競争力の強化やサービスラインの多様化を目的としたM&Aです。特に、AIやクラウドインフラ、データアナリティクス関連企業への買収が増加しています。
また、リモートワークの普及に伴い、チームコラボレーションやプロジェクト管理ツールを提供する企業も注目されています。
このように、市場成長を図るためにSaaS企業を買収することで、既存事業との組み合わせや新規サービス導入が容易になり、市場でのポジションをより強化できます。
SaaS業界では、将来性の高いアイデアやサービスをもつ企業の買収も活発です。環境保全が世界的に求められている近年では、特にESGやグリーンテクノロジーに配慮したSaaS企業が注目されています。
将来性のある事業や企業の買収によって、新規事業への参入や既存事業との統合による付加価値の創出が可能になります。また、自社製品との組み合わせによる弱点の補完や、新しい価値の提供といったケースも増えています。関連事業とのシナジーによって、販売層の拡大や市場シェア獲得も狙えるでしょう。
短期間で市場開拓やイノベーションを目指すSaaSスタートアップにとって、M&AはEXIT戦略として重要な手段となっています。
海外ではIPOよりもM&AによるEXITが一般的であり、大手企業に統合されることで資金やリソースを確保しつつ、サービス提供範囲や事業規模を拡張できます。
こうした統合の動きによって、スタートアップ企業は成長機会を最大化しながら、市場全体でのポジション確立を図ることができます。
SaaS業界のM&Aにおいて、近年では特に下記の分野が注目を集めています。
これらの分野は、企業の業務効率化や売上拡大に直結するサービスが多く、売り手にとっては比較的高い条件で売却しやすい特徴があります。買い手にとっても市場の需要が安定しており、将来的な成長が見込まれるため、狙い目のジャンルとして人気を集めています。

SaaS業界のM&Aは、譲渡(売り手)側・譲受(買い手)側双方に多くのメリットをもたらします。
まずは、売り手のメリットについて詳しく紹介します。
M&Aによる売り手の最も大きなメリットは、単独では実現が難しかった市場拡大や新サービス導入が可能になることです。
買い手企業の資金やノウハウ、既存顧客基盤といった資源を活用できるため、既存事業の弱点を補完しつつ、事業全体の安定性や競争力を高められます。また、技術や営業力のシナジーにより、新規顧客獲得や収益拡大も期待できる点も魅力です。
結果として事業基盤が強化され、既存顧客へのサービス品質向上や新規市場への展開が容易になるだけでなく、将来的な事業成長の余地も広がります。
経営環境の変化や資金不足で事業継続が難しい場合でも、M&Aを活用すれば廃業や撤退のリスクを回避できます。廃業に伴うコストを抑えられるだけでなく、従業員の雇用を維持し、育成や新規事業への参画といった成長機会を提供することも可能です。
後継者不足が大きな課題となっている企業にとって、事業を存続させながら社会的責任を果たせるという点は大きなメリットとなるでしょう。
M&Aによって事業を売却すると、事業の価値に応じた売却益(創業者利益)を得られます。
売却益は、次の事業展開や個人のライフプランに自由に活用できます。得られた資金をもとに新規事業に挑戦する人もいれば、完全に引退して売却益を使いながら自由な時間を過ごす人もいます。
また、事業の売却とともに財務的責任の解除手続きを進められた場合は、これまで負っていた個人保証や担保からも解放されます。売却益を獲得できるだけでなく、財務リスクも大幅に軽減させられる点は、創業者にとって非常に大きな助けとなるでしょう。

SaaS業界のM&Aは、買い手側にも多くのメリットをもたらします。既存事業への参入や新規事業の拡大を効率的に進められるだけでなく、優秀な人材や技術を獲得できる点も大きな魅力です。
ここからは、M&Aによる買い手にとっての具体的なメリットを詳しく紹介します。
新規でSaaS事業を立ち上げる場合、開発費やマーケティング費用、人材採用など多額のコストが必要です。
しかし、M&Aを活用すれば既存のサービスや顧客基盤を引き継げるため、初期投資を抑えつつ迅速に事業参入が可能となります。
また、実績のあるサービスを取得することで、事業の不確実性や市場リスクを低減できる点も大きなメリットです。
SaaS業界は高度な技術力や専門知識を有する人材が必要なため、スタートアップの採用競争は激化しています。
しかし、M&Aによって事業ごと取得することで、優秀なエンジニアや営業、プロダクトマネージャーなどを一括で獲得できます。自社の技術力や運営力を強化できるだけでなく、人材採用や育成にかかる時間とコストを大幅に削減できる点も大きなメリットです。
取得したSaaS事業は、既存事業との統合によりシナジーを生み出すことが可能です。例えば、製品機能の補完や顧客基盤の拡大、販売チャネルの共有などにより、売上増加やコスト削減が期待できます。
また、新規サービスの導入やアップセルによって既存事業の価値向上も図れるため、長期的な成長戦略の一環としてM&Aは非常に有効な手段となります。

SaaS業界でM&Aを成功させるためには、実際の事例を参考にすることが非常に有効です。
ここからは、近年注目されたSaaS業界における3つのM&A事例を、それぞれの目的や背景、成果とともに詳しく解説します。
2024年8月、株式会社fonfunは株式会社イー・クラウドサービスの発行済み全株式を取得し、完全子会社化しました。これにより、株式会社イー・クラウドサービスは正式に株式会社fonfunのグループ会社となりました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社イー・クラウドサービス |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社fonfun |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
株式会社fonfunは、業務効率化やクラウドソリューションを提供するSaaS企業です。
株式会社イー・クラウドサービスは、飲食店向け日次決算プラットフォームを開発・運営する企業で、店舗運営の効率化を支援しています。
今回のM&Aによって株式会社fonfunは株式会社イー・クラウドサービスの顧客基盤とノウハウを取り込み、さらなる事業拡大とサービス多様化を目指しています。
2024年6月、株式会社NTT DATA, Inc.は、100%子会社であるドイツのNTT DATA Business Solutions AGを通じ、インドのProvenTech Consulting Private Limitedを買収しました。これにより、ProvenTech Consulting Private LimitedはNTT DATAグループの一員となりました。
| 譲渡(売り手)側 | ProvenTech Consulting Private Limited |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社NTT DATA, Inc. |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
株式会社NTT DATA, Inc.は、日本および世界でITサービス・コンサルティングを展開する大手企業です。
ProvenTech Consulting Private Limitedは、製薬・ライフサイエンス企業向けのコンサルティング、システム導入、マネージドサービスおよび自社SaaSソリューションを提供しています。
今回のM&Aによって、NTT DATAはProvenTech社の専門性を取り込みながら製薬・ライフサイエンス向けソリューションを強化させるとともに、グローバル市場での競争力向上と、既存顧客への高度なサービス提供も目指しています。
2024年4月、株式会社fonfunは株式会社ゼロワンが展開するノーコード業務アプリ開発SaaS事業を買収しました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社ゼロワン |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社fonfun |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 事業譲渡 |
株式会社fonfunは、クラウドサービスや業務効率化ソリューションを提供するSaaS企業です。
株式会社ゼロワンは、ノーコード業務アプリ開発SaaS事業を展開し、中小企業向けの業務効率化を支援しています。
今回のM&Aにより、株式会社fonfunは株式会社ゼロワンのノーコード技術を取り込み、既存SaaSサービスとの統合による新たな価値提供を目指しています。

SaaS業界でM&Aを成功させるには、売り手・買い手いずれの立場でも共通する下記の重要なポイントをおさえておきましょう。
●あらかじめM&Aの目的を明確にしておく
M&Aを行う前に、自社が何を達成したいのかを整理することが重要です。売り手であれば事業継続や創業者利益の確保、買い手であれば事業拡大やシナジー効果の獲得など、目的を明確化しておくことで、交渉や条件設定がスムーズになります。
また、目的が明確であれば、M&A後の統合計画や運営方針が揺らぐことなく進めやすくなります。
●M&Aに詳しい専門家に依頼する
法務・財務・税務などの専門知識が求められるM&Aでは、専門家のサポートが不可欠です。弁護士、公認会計士、M&Aアドバイザーなどの専門家を活用することで、リスクの回避や適切な評価・条件設定が可能になります。
また、交渉や契約書作成のプロセスも円滑になり、取引全体の成功確率を高めることができます。
SaaS業界では、競争優位性の確保や事業成長の加速を目的としたM&Aが増加しています。売り手・買い手ともに事業基盤の強化やシナジー効果の獲得といったメリットがある一方で、統合によるリスクやデメリットも当然ながら存在します。
SaaS業界のM&Aを成功させるためには、専門家のサポートが不可欠です。「株式会社レコフ」は、業界トップクラスの成約件数を誇り、独自ネットワークと豊富な情報ストックをもとに、最適なM&A案件を提案しています。M&Aを検討しているなら、ぜひ一度ご相談ください。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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